企業市民として期待される、企業の役割~市民社会の中で求められる、ジャパン・プラットフォームの役割~

特定非営利活動法人 ジャパン・プラットフォーム(JPF)発足14年目。JPF共同代表理事 有馬利男氏と日本経済団体連合会 社会貢献推進委員会委員長・JPF理事 古賀信行が、JPFと企業の関係について語ります。

写真:古賀 信行

野村證券 取締役会長
経団連 副会長・社会貢献推進委員長
JPF理事
古賀 信行

写真:有馬 利男

グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク代表理事
JPF共同代表理事
有馬 利男

NGO、経済界、政府が志をともに設立した緊急人道支援の仕組み

有馬氏:2000年に日本の緊急人道支援の新しい仕組みとして誕生したジャパン・プラットフォーム(以下、JPF)は、今年で14年目を迎えました。それまでは世界で緊急人道支援が必要とされているとき、日本のNGOは単独で迅速かつ包括的な支援を行うだけの財政基盤が十分にはなく、国際支援の輪に入れなかった実情がありました。募金からスタートして現地入りは1カ月後という遅さで、日本は支援国としてのプレゼンスを示すことができなかったのです。現在では、NGO、経済界、政府(外務省)が三位一体となり、各リソースを持ち寄って、日本の緊急人道支援の迅速かつ効果的な実施という目的に向かって連携していく仕組みが機能しています。JPFの仕組み、現地情報、初動資金をもとに、発災の翌日には被災地に向かうことが可能になりました。こうして設立以来、40以上の国や地域で、総額310億円以上もの支援金による、910以上の事業が実を結んでいます。このプラットフォーム構想の発案当初から、日本経済団体連合会(以下、経団連)や外務省とは志をともにしてきた経緯がありますね。

古賀:ひとつの構想に向けて、NGO、政府、経済界がデザイン段階から一緒になって考えを固めていったのは、非常に貴重なことだと思います。企業としても、NGOは無視し得ないという自覚が出てきた時期でもありました。世界で起こる紛争や災害に対し、企業市民としてできることを模索するものの具体策がない。パートナーとしてのNGOを、どのような判断基準で選択したらよいのかがわからない。支援金使途を明確に提示できる透明性を求めなければならない等の課題もありました。

有馬氏:そうですね。特に説明責任や透明性確保のための評価システムの確立は、JPF発足当時から、当時の経団連からも発案していた構想の柱の1つでしたね。

古賀:企業のJPFへの寄付は、経験、知識、実績をしっかりと伴ったNGOの活動に寄付するためのスクリーニング機能でもあり、多くの支援企業はそこにも信頼性、価値を見出しているのではないでしょうか。JPFには、各NGOが助成を受けるための厳しい審査がありますよね。

有馬氏:企業や個人の皆様から寄せられた大切な支援金を、有効に使うことは我々の使命ですからね。各支援事業に対しては、「助成審査委員会」で関連の専門家と事務局がその経済性、実現性、安全管理体制などを評価し、さらに「常任委員会」において経済界、NGO、外務省、有識者等の代表が、妥当性や総合的な見地から見極める厳しい審査を迅速に行い、最終的に承認された事業にのみ助成します。緊急支援のための審査ですから、判断にはスピードが求められます。もちろんJPF事務局のモニタリングによるフォローアップも怠りません。現在49の加盟NGOがプログラムごとにワーキンググループを形成して情報共有し、各得意分野を生かしながら、JPFとして包括的に支援展開できることも強みです。

大きな自然災害の被災者支援に対し協働し、迅速な出動・長期支援を実現

有馬氏:2013年度も残念ながら世界で多くの自然災害、紛争がありました。特に、発災直後の11月に出動を決定したフィリピン台風30号(ハイエン)被災者支援では、経団連1%クラブ参加企業をはじめ、多くの企業・個人のみなさまからご支援をいただき、JPFとして総額約3億3,000万円もの支援金をもとに、35の事業を実施することができました。改めて、みなさまのあたたかいご支援に心より感謝申し上げます。

古賀:フィリピン台風30号(ハイエン)被災者支援では、出動1カ月後とプログラム終了直後に、加盟NGOスタッフらとともに寄付企業向け報告会をしましたね。ウェブサイトでの支援活動情報の頻繁な更新に加え、あのように企業のCSR担当が実際に現地で活動していたスタッフから直接報告を得られる機会は、支援使途の透明性ニーズに応えていると思います。JPFの存在意義でもあり、今後も継続して行かねばいけないことです。2011年の東日本大震災被災者支援の際、企業や個人のみなさまからの多額のご支援も、普段から愚直に信頼関係を築いてきた賜物なのだと思います。

有馬氏:東日本大震災の被災者支援では、企業をはじめ、国内外の支援者から総額70億円という多額の資金を寄せていただきました。また、各社の事業・サービスを活かした迅速で多種多様なサポートもいただきました。震災直後の2011年3月のJPF仙台事務所設立や、岩手、宮城、福島各県における地域担当スタッフの配置など、地元との連携を重視しながら支援活動を継続し、これまでに約3,300件の企業・団体、約43,000件の個人のみなさまからの寄付を、約150のNGO/NPOへとつなぎ、約310の支援事業を実施してまいりました。

古賀:JPFの迅速な出動決定に企業が賛同し、すぐに出動できるよう支援金でサポートする。東日本大震災、フィリピン台風30号(ハイエン)と続いた大きな被災者支援への対応と、その支援企業の方々への綿密なフィードバック体制を経て、企業とJPFの信頼関係はより強くなったように感じています。

有馬氏:JPFとしてきちんと応えていかねばなりませんね。東日本大震災については、復興の主体となる地元NGO/NPOへ助成する「共に生きる」ファンドを主軸に、当初3年としていた事業を2015年度末まで2年延長し、被災地の長期的な課題を見据えた支援計画を進めています。福島への支援はさらに長期的な視点が必要です。

企業市民としての企業への期待
求められるJPFの役割

有馬氏:CSRを事業本流の中に統合する傾向が強くなっていますが、企業はお金だけでなく、本業をとおして貢献したいという傾向がさらに強くなっていますね。

古賀:1%クラブ企業を対象に行っている2012年度の社会貢献活動実績調査結果によると、企業のNGOに対する寄付実績が59%であるのに対し、協働事業実績は52%と追いあげています。例えば東日本大震災被災者支援についても、震災から3年半を経て、より専門性や得意分野を生かした貢献を考えている企業が少なくありません。JPFが地元に根ざした支援活動をしながら得てきた、地元の方々の声、最新の被災地ニーズや課題などを企業に提供することに注力していることは、とても評価されていると思います。

有馬氏:大きな自然災害の被災者支援に本当に多くのご支援をいただいている一方、実はJPFの支援活動全体で見ると、まだ民間資金が少ないのが現状です。JPFの基盤を根本からしっかりと支えていただくためには、企業が本業を活かしてNGOと協働していける機会の創出はもちろん、継続的な賛助会員や、これから起こる災害のための支援基金として、より多くの民間資金を集めることが我々の課題です。企業の、本業を活かした貢献をしたいという観点から言うと、お金を寄付するというのとは反する流れになってきていますが、この2つは相反してしまうものなのでしょうか。

古賀:本来は相反するものではないと思います。原点は企業も企業市民として、社会のいろいろな事象に対してきちんと反応していくことが望まれるようになってきているということです。経営レベルでもその意識が確実に高まってきている。社会は本業だけではないと思うんです。本業ではないところで、資金や人材力という形でしか貢献できないこともある。

有馬氏:スチュワードシップコード、コーポレートガバナンスコードが話題となっていますが、企業市民という意識をもってビジネスをしている企業ほど、持続性のある強いビジネスをしていると思います。そのような意識を持つことで、結果的に社会に貢献し利益を生む、という好循環につながっていくと思います。

古賀:1%クラブは、経常利益の1%を社会貢献に使うことを支援する組織です。実際は1%以上出していますが、つまり一定の貢献をしていこうというスタンスです。我々は寄付だけではなく、有効な社会貢献のため、企業やその社員とNGO/NPOを結びつけ、また、どういう観点で社会貢献をやっていくべきか等、企業市民としてのあり方を考えるためにあります。JPF設立当初に、「1%クラブとしてJPFを支援する」と決定し、今もそのスタンスをずっと継続しています。

有馬氏:力強い言葉をありがとうございます。JPFでは東日本大震災の教訓を活かし、国内における災害についても迅速に現地入りし、支援に備えた状況調査や地元との連携を行っています。いつ起こるかわからない大震災や紛争に備え、また平時からの防災減災に関しても、NGO、経済界、政府が連携する、JPFという仕組みが果たして行かねばならない役割は大きいと思っています。

古賀:これからもJPFの活動を目に見える形でどんどん発信し、市民社会のあり方や心構えに対し、ジャパン・プラットフォームの仕組みを提示し続ける存在であってほしいと思います。

野村グループより

野村グループでは、これまで2008年5月のミャンマー・サイクロン、2009年10月のスマトラ沖地震、2010年1月のハイチ地震、2010年2月のチリ地震、2011年3月の東日本大震災においてJPFを通じて支援金の拠出を行ってきました。JPFは、日本における迅速かつ効果的な緊急人道支援の新しい仕組みを確立し、NGO、経済界、政府の協働の下、多くの実績や経験を有しています。当グループにとってNGOは大事なステークホルダーの1つであり、今後も企業市民活動の一旦としてJPFを支援してまいります。

有馬 利男(ありま としお)
2010年より、ジャパン・プラットフォーム共同代表理事。1967年 国際基督教大学教養学部卒業、同年 富士ゼロックス入社。同社 常務取締役 Xerox International Partners 社長兼CEO、2002年から富士ゼロックス代表取締役社長、2007年から相談役。現在、富士ゼロックス・イグゼクティブアドバイザー、国連グローバル・コンパクト・ボードメンバー、一般社団法人グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク代表理事、ほか数社の社外取締役を兼任。2014年外務省表彰受賞。

古賀 信行(こが のぶゆき)
2009年より、ジャパン・プラットフォーム理事。1974年 東京大学法学部卒業。同年 野村證券株式会社(現、野村ホールディングス株式会社)入社。2003年 野村ホールディングス 取締役社長兼CEO、野村證券 取締役社長。2011年より両社の取締役会長。2007年、日本経済団体連合会 社会貢献推進委員会 共同委員長、2012年より委員長。2014年より同会 副会長。

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