ボラティリティ・インデックスとボラティリティ取引
論文2011年新春号
野村證券エクイティ・クオンツ・リサーチ部 山中 智
目次
- I.はじめに
- II.ボラティリティ・インデックス
- 3種のボラティリティ
- 世界のボラティリティ・インデックス
- III.日経平均ボラティリティ・インデックス
- 概要
- 算出方法
- 統計的性質
- IV.ボラティリティ・インデックスを用いた投資指標と株式投資戦略
- スキュー・スマイル指標
- モメンタム・リスクコントロール戦略
- V.ボラティリティ取引
- 概要と分類
- ボラティリティ先物取引
- OTCボラティリティ取引
- バリアンス・ショート取引
- ダウンサイド/アップサイド・バリアンス・ショート取引のリスク・プレミアム
- VI.おわりに
要約と結論
- 2010年11月に日本経済新聞社より日経平均ボラティリティ・インデックス(日経平均VI:変動性指数)が日々公表され、上場指数オプション市場における総体的なボラティリティの水準を投資家が容易に把握できるようになった。ボラティリティ・インデックスについては、米国ではVIX、欧州ではVSTOXXが公開されており、先物取引やETF(上場投資信託)の上場が進んでいる。日本でもボラティリティ取引が今後盛んになることが期待されている。
- ボラティリティの上昇局面で株式を売るボラティリティ・モメンタム戦略や、ボラティリティが上昇すると株式への投資比率を下げるリスクコントロール戦略などの新しいタイプの投資戦略が注目を集めている。ボラティリティ・インデックスを参照することで、運用パフォーマンスを改善できる可能性がある。
- 欧米ではボラティリティETFが上場されたことで、ETFが投資対象とするボラティリティ先物の取引高は2010年に急増している。また日本のOTCボラティリティ取引におけるビッド・アスク・スプレッドも世界金融危機以前の水準に戻り、取引が活発に行われている。
- ボラティリティ・インデックスはバリアンス・スワップ取引(表6)における取引レートの理論値であり、それに基づいてヘッジ・ファンドの戦略の一つでもあるバリアンス・ショー卜取引の過去のパフォーマンスを推定することができる。世界金融危機時には大きな損失が発生しているが、平常時には継続して高いリターンが達成されていたことがわかる。