新しい投資アドバイス手法と行動ファイナンス
論文2016年春号
野村證券金融工学研究センター 大庭 昭彦
目次
- I.はじめに
- II.投資アドバイスの理論の革新
- 投資アドバイスと現代ポートフォリオ理論
- 行動ファイナンスと投資アドバイス
- III.行動ファイナンスと投資のゴール
- 行動ファイナンスの歴史
- 行動ファイナンスによる最適化理論
- IV.投資のゴールに必要な特徴
- 投資のゴールとサリエンス
- 貯めたい気持ちと消費フレーム
- V.ゴールのない投資家の問題
- 人の行く裏に道あり花の山
- 人にやさしいゴールベース
- VI.ゴール・ベースド・アプローチの方法
- 一般のゴール・ベースド・アプローチ
- 夫婦のゴール・ベースド・アプローチ
- VII.投資アドバイザーの重要性
- 株式投資と信頼
- アドバイザーへの信頼の価値
- VIII.まとめ
要約と結論
- 米国で個人が投資アドバイスをプロのアドバイザーに受けるサービス(投資アドバイスソリューション、IAS)が拡大し、2015年3月には資産額が4.1兆ドルにもなっている。
- 投資アドバイスにはロジック(理屈付け)が必要である。このロジックはもともと現代ポートフォリオ理論を基礎としていたのだが、この十年程度で大きな変化が起こっている。変化の中心となるのは行動ファイナンスの応用である。特に新しい最適化理論を使ったゴール・ベースド・アプローチの利用が進んでいる。
- ゴール・ベースド・アプローチでは投資のゴールが重要である。この投資のゴールに必要な特徴は心理学でいうサリエンス(突出性)である。また、ゴールのない個人投資家は損失につながる問題のある行動をしているが、投資アドバイス、特にゴール・ベースド・アプローチが問題を減らすのに役立っている。
- ゴール・ベースド・アプローチでは通常(1)ゴールのリストアップ、(2)ゴールの検討、(3)投資の実行、(4)レビューの4つのステップを踏むことになる。特に家族全体や、夫婦に対するアプローチとして有用である。
- ゴール・ベースド・アプローチを始めとした投資アドバイスでは、信頼される投資アドバイザーの役割が重要である。
- 今後日本でも個人のリスク資産投資が拡大していく中で、こうしたアプローチがうまく使われていくことを期待したい。