グローバル人権課題への対応が「待ったなし」となる日本企業

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2020年10月16日、「ビジネスと人権」に関する行動計画が、当該行動計画に係る関係府省庁連絡会議により策定、公表された。この行動計画の実施や周知が、(1)「ビジネスと人権」に関する関係府省庁の政策の一貫性確保、(2)責任ある企業行動の促進、(3)企業活動により人権への悪影響を受ける人々の人権保護・促進、(4)国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進への貢献、(5)日本企業の企業価値と国際競争力の向上、及び(6)SDGs達成への貢献に繋がると期待される。
  2. 「ビジネスと人権」に関する行動計画は、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」の履行を目的に策定された。しかし、経団連が2020年7~8月にかけ加盟企業を対象に行ったアンケートによると、指導原則に則してビジネスと人権への取り組みを進めているとの回答割合は36%に留まっており、対応はまだ道半ばと言えよう。
  3. 「ウイズコロナ」の時代に入り、人権に対する取り組みの重要性が世界的に高まっている。日本でも今回の行動計画の策定を受け、「ビジネスと人権」に基づく人権課題への対応が喫緊の課題となる。投資家側でも人権問題への関心が高まっている。ただし、対応する際に留意すべき点は、グローバルな人権課題は日本企業が想起するものよりも広範囲にわたることである。対応にあたっては、国連環境計画金融イニシアチブの人権ガイダンスツールに示された人権課題などが参考になろう。
  4. 「ビジネスと人権」への取り組みはSDGs各目標の達成、そして、一層盛んになるであろうESG投資において日本企業や株式市場のプレゼンス向上につながることが期待される。
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