2007年11月26日
関係各位
野村證券株式会社
『第10回 家計と子育て費用調査』(エンジェル係数調査)
高校生以下の子供を持つ 首都圏・京阪神700世帯の主婦を対象にしたアンケート
- 「景気実感」のプラス評価は過去最高値を更新。「暮らし向き」も上向くが、低年収層では依然『暮らし向きは悪くなっている』感が強い。
前回調査(05年)に比べ、景気が「良くなっている」は20.7%で、97年調査以降最高値。一方で、低年収層ではネガティブな評価が多く、年収による二極化が明確に現れた。
- エンジェル係数(家計支出に占める子育て費用の割合)は、過去最低の26.2%。
「子ども人数減少」「年収による二極化」が主な関与要素。教育費(額)は一定水準を保つ。
- 52%が国際化教育を実施。今後の国際化教育意向者は86%。
現状で年間平均9万5千円が国際化教育に使われているが、今後は19万2千円までなら使っても良いと考えている。
- 祖父母から子ども宛に年間14万円超の援助(金銭+物品)がある。祖父母以外の親戚からは4万8千円。
金銭面では、「おこづかい・現金」の形で85%が受け取る。他に「身の回り品」「おもちゃ」といった物品のプレゼントが5割。援助金額は「こどもの預貯金」で34万円、「習いごと、おけいこごと」の物品援助で29万円等。
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第10回 家計と子育て費用調査

生活水準の向上に伴い「エンゲル係数」(消費支出に占める食費の割合)は、年々減少しています。その一方で、子育てにかかる費用は学校、塾、習い事や将来のための預貯金など多岐にわたるようになり、その額も93年まで上昇傾向にありましたが、その後は、景気の低迷の影響を受け下落に転じました。子育て費用は景気と家計の関係を計る上で重要な指標になります。
今回で第10回となる本調査は、野村證券が89年(平成元年)から隔年で継続実施しているものです。家計と子育てを継続的に見る視点として「家計支出に占める子育て費用の割合」=「エンジェル係数」という造語を打ち出し、過去19年間にわたり、子育てという観点から家計の現状、経済事情を定量的に捉えたユニークな調査として各方面から注目されてきました。
当初はなじみのなかった「エンジェル係数」という造語も、次第に定着し、用語辞典に収録され、時事・報道の場でも一般的に使われるようになってきました。
本年の調査では、ビジネスや生活の場で進む国際化を背景に小学校でも英語教育の導入が進むなど状況を踏まえ、子育て費用における「国際化教育」に関するアンケート項目を付け加えました。
また、第8回調査で新たに加えた子育てにおける祖父・祖母、親戚全般の経済的関与についても時系列的に検証すべく本年も調査を行っています。
調査は、2007年7月に首都圏と京阪神に住む高校生以下の子供を持つ700世帯の主婦(首都圏350世帯、京阪神350世帯)を対象にアンケート形式で行いました。
項目ごとに結果を要約すると、以下のようになります。
エンジェル係数は、1989年の第1回調査から93年調査でピークに達し(33.4%)、これ以降低落傾向にある。97年(30.2%)以降はほぼ横ばい状態が続いていたが、03年の調査で再び下降傾向に転じ、今回の調査では同様のサンプリング方式となった91年第2回調査以降最低を記録した。
一方、今回の調査で特徴的なのは、景気や家計に関する回答の改善と、年収による二極化傾向である。景気、暮らし向きについて「良くなってる」との回答は着実に増えているが、年収が300万円未満の層では景気は「悪くなっている」との回答が依然上回る。
この傾向は、子育て関連支出にも反映している。大勢の景気実感が改善されている状況の中、エンジェル係数(家計における子育て費用の割合)が過去最低を記録したことには、低年収層の子育て費用の引き締めが関与していると考えられる。
もうひとつの要因は、少子化傾向である。子ども一人あたりの子育て費用実額は、前回調査よりわずかながら上昇しているが、一家庭ごとの子どもの人数が減少してることから家計単位では低下となっている。ただし、子育て費用における教育費の割合は上昇している。これは、子育て費用全体が絞り込まれている中で、教育費は前回、前々回とほぼ同額で推移しているためである。
今回の調査では、特に家庭における国際化教育の状況を費用面から見ているが、今後の支出意向の大きな分野であることがわかった。また、親の職業や年収によってその意向に偏りも見られ、今後、少子化傾向、年収による二極化が国際教育の場で一層の格差となって現れることも予想される。
また、今回「祖父母以外の親戚」の協力を聞いたところ、おじ・おばの協力・援助が上昇しており、祖父母の協力・援助がやや減少している。前者は景気の改善、後者は年金などの不安要因がそれぞれ関係しているとの解釈も可能だが、本調査では推測の範囲を出ない。非婚・晩婚、少子化社会において、親戚が果たす子育ての役割はより重要になると考えられる。子育ての経済環境を考えるにあたって、現在、家庭内で計測しているエンジェル係数とにらみ合わせていく必要がある。
【家計動向】(報告書10ページ参照)
「景気実感」のプラス評価は過去最高値を更新。「暮らし向き」も上向くが、低年収層では依然「暮らし向きは悪くなっている」感が強い。
<景気実感と暮らし向き(報告書20〜25ページ参照)>
- 今の景気については「良くなっている」が20.7%。この数値は97年以来最高のスコア。「悪くなっている」も2割強で、「良くなっている」と同程度。6割弱は「どちらともいえない」。
- 暮らし向きについては、「良くなっている」が17.6%。この数値も97年以来最高値。ただし暮らし向きは「悪くなっている」(37.9%)の方が「良くなっている」(17.6%)よりも20ポイント高い。
- 景気についても、暮らし向きについても、〜300万円未満などの低年収層でネガティブな評価が目立ち、1,000万円以上の高年収層ではプラス評価が高い傾向がある。
<節約・倹約(報告書26〜31ページ参照)>
- 節約・倹約をしているのは80.4%(「かなり」:15.7%、「やや」:64.7%)。節約を「かなりしている」割合は年収が低いほど高い。また節約・倹約をしている割合は03年以降微減傾向にある。
- 最も節約をしているのは「自分自身のための支出」、他に「レジャー費」「外食費」「食費」など。「子どものための支出」を節約する割合は少ない。
【エンジェル係数】(報告書11ページ参照)
エンジェル係数は過去最低の26.2%。「景気と消費のタイムラグ」「子ども人数減少」「年収による二極化」が主な関与要素。教育費(額)は一定水準を保つ。
<エンジェル係数(報告書36〜38ページ参照)>
- 家計支出を100とした場合の子育て費用割合(=エンジェル係数)は今回調査では26.2%。これは91年以来、過去最低値となる。
- 考えられる要因としては、「子ども人数の減少」とさらに、今回調査の特徴として、年収の多寡による二極化があげられる。前項からも「景気」「暮らし向き」は低年収層では厳しく受け止められ、高年収層では高く評価される傾向がみられたが、これは、エンジェル係数(およびそこから算出される育児費用実額)でも顕著な結果となった。前回調査と比較しても、二極化/格差はより鮮明になっている。
<教育費割合(報告書39〜41ページ参照)>
- 子育て費用を100とした場合の教育費割合は今回38.7%。この数値は、01年〜05年をわずかに上回り、97年・99年に続く過去3番目の数値。
- 家計支出額、エンジェル係数から、教育費の実額を算出すると、2万8千円。03年以降この金額にはほとんど変化はないと言える。
- なお、教育費割合(および教育費実額)においても、年収の多寡による二極化の傾向がある。
<家計支出額/子育て費用実額/教育費実額(報告書33〜41ページ参照)>
- 家計支出は03年以降減少していたが、07年で微増に転じる。子育て費用実額は微減傾向。そのうち教育費実額は03年以降一定水準を保っている。
【子育て費用の負担感/考え方】(報告書13ページ参照)
「子育て費用」が「かなり増えた」という人は減少傾向。「負担感」も減少。「人並み、世間並み」を望む気持ちが増加。
<子育て費用の1年前と比べた増減(報告書44〜46ページ参照)>
- 『1年前と比べて』子育て費用の増減を聞くと、「かなり増えている」(21.1%)、「やや増えている」(57.3%)、合わせて78.4%が1年前より子育て費用が「増えている」。
- ただし時系列でみると、「かなり増えている」の割合は減少。
<子育て費用の負担感(報告書47〜49ページ参照)>
- 子育て費用に「負担を感じている(計)」人は57.9%。
- 時系列でみると、「負担を感じている(計)」割合は微減傾向にある。
<子育てに関する考え方(報告書50〜52ページ参照)>
- 「できるだけ子どもの人生を充実させてやりたい」が40.8%、「人並、世間並のことをしてやりたい」が35.6%。
- 過去調査に比べて「人並、世間並のことをしてやりたい」の割合が増えていることが特徴。
【子どもの国際化教育】(報告書14ページ参照)
52%が国際化教育を実施。今後の国際化教育意向者は86%。現状で年間平均9万5千円が国際化教育に使われているが、今後は19万円2千円までなら使っても良いと考えている。
<国際化教育の経験/費用/今後の意向(報告書54〜60ページ参照)>
- 過去3年間に行われた『子どもに対する国際化教育』で多いのは「学校以外の英語教育」で4割弱。第一子が未就学児においてさえ3割を超え、小学校高学年/中学生では過半数となる。
- 他に目立つのは「家族と海外旅行」「映画や美術、舞台等外国文化に触れる」が1割強。なんらかの国際教育を行った割合(「なし」以外)は52.0%。
- 「学校以外の英語教育」にかかる費用は子ども一人あたり年間平均10万1,334円。「家族との海外旅行」は子ども一人あたり年間平均20万1,149円、「映画や美術、舞台等外国文化に触れる」は年間平均1万5,966円。
- 費用が高いものでは「インターナショナルスクールやアメリカンスクールに通う」(78万8,889円)、「海外・長期留学」(70万円)等がある。
- 『今後行いたい国際化教育』も上位3項目は、現在行っている国際化教育と同様。ただしいずれも『今後』の方がスコアが高い。他にも「海外・短期留学」「学校の修学旅行等で海外へ行く」「ホームステイ」等、海外渡航体験を通じての国際化教育への関心が高い。
- なんらかの国際化教育を行わせたいと考える人(「なし」以外)は85.7%。現在の国際化教育の実施割合(52.0%)を30ポイント以上上回る。
<国際化教育の費用・現状と今後(報告書58〜59、63〜64ページ参照)>
- 子ども一人あたり、1年間でかかった国際化教育の費用は全員ベース平均で9万4,533円。「0円」の回答を除く、つまりなんらかの費用をかけた人ベースでは18万6,404円となる。
- 今後、国際化教育に出してもよいと考える費用(子ども一人あたり、年間平均)は全員ベース平均で19万2,452円。つまり現状よりプラス10万円程度であれば出してもよいと考えている。「0円」の回答を除く、つまり費用をかけてもよいと考える人ベースの平均は23万479円。これは現状より5万円程度高い。
<国際化教育に関する意識(報告書16ページ参照)>
- 「外国語習得は不可欠」、さらに「国際的なセンス」や「日本文化を身につける」ことも重要。ただし国際化教育のための「費用が高い」ため、「学校や自治体からの機会提供」が求められている。
- 「外国語の習得は不可欠」「国際化教育には費用がかかりすぎる」という項目には同意者<そう思う(計)>が8割以上。
- 他にも「子どもには国際的な視野や感覚、センスを取り入れて欲しい」「真の国際化のためには、日本文化を身につけさせることが先決」「学校や自治体でもっと国際化教育の機会を作って欲しい」といった項目も7割以上が同意。
【祖父母や親戚からの援助】(報告書17ページ参照)
祖父母から子ども宛に年間14万円超の援助(金銭+物品)がある。祖父母以外の親戚からは4万8千円(受領者ベースで6万6千円)。
<祖父母からの援助項目とその費用(71〜76ページ参照)>
- 祖父母から子どもに対し「おこづかい・現金」の授与は84.6%。物品で「衣類、靴、カバン等身の回り品」「おもちゃ」といったものの授与が5割弱。金銭で「衣類、靴、カバン等身の回り品」「遊び、レジャー」「おもちゃ」についての援助があったものが3割程度。
- 援助額平均(援助のあった人ベース)をみると、「子どものための預貯金」が約34万円。他に金額が高い項目としては「習いごと、けいこごと」関連の物品援助で29万円弱、「学校教育」の金銭的援助で24万円弱などが目立つ。
<祖父母からの年間援助額(78〜80ページ参照)>
- 祖父母からの援助額(金銭援助と物的援助の合計)平均は、全員ベースで14万715円。「0円」回答を除く、受領者ベース平均では14万4,897円。
- 前回調査に比べて祖父母からの年間援助額平均はやや減少している。
<祖父母以外の親戚からの援助(84ページ参照)>
- 祖父母以外の親戚で最も多く金銭あるいは物的プレゼントをくれるのは、「おばさん(既婚者)」(25.8%)で、次いで「おじさん(既婚者)」(15.1%)、「おばさん(独身者)」(8.9%)となる。
<祖父母以外の親戚からの援助額(81〜83ページ参照)>
- 祖父母以外の親戚からの援助額は全体ベース平均で4万7,914円。「0円」を除く受領者ベースでの平均は6万6,394円。いずれも05年調査より高い。
以上
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