東北 with Nomura仏師とNomura 復興への願いがつなぐ縁

日本人にとって桜は特別なものですね。この写真、実は社員が撮影したものです。場所は宮城県の亘理郡山元町。東日本大震災で津波被害をうけたこの地域の再生を願い、野村は2012年から地元グループのみなさんと共に、戸花山を桜の名所にしようと活動を続けています。

今回、週刊新潮「新しい時代を切り開く7つのキーワード」(2021年3月18日号)で、野村は「紡ぐ」をテーマにこの「さくらプロジェクト」を紹介させていただきました。桜の植樹を通して自然の豊かさを取り戻し、持続可能な環境への願いを将来に紡いでいきたいと考えています。

そしてこの特集でタイアップさせていただいたのが、仏師で彫刻家の加藤巍山さん。昨年、Christie’sのオークション「Japanese and Korean Art」に出品されるなど国内外で広くご活躍中です。社会的・文化的貢献にも積極的で、ご専門である仏像を通しより良い未来のために活動を続ける加藤さんに、経済の循環を通じて持続可能な社会を創りたいと願う野村は共感しました。今回、加藤さんが震災直後から力を注いできた東北でのプロジェクトと、そこに込めた祈りについてお話しを伺いました。

Gizan Kato

東日本大震災が起きたとき、その惨状が毎日つぶさに知らされるなか、何かできることはないかと自問自答した末に思い至ったのは、結局自分には彫ることしかできないということでした。そこで、被災された方や亡くなられた方の魂を慰めるモニュメントとして仏像を届けたいとツイッターで呼びかけたところ、仏師の三浦耀山さんの協力を得られることになり、「縁─Enishi─仏像奉納プロジェクト」はスタートしました。

昨年3月に岩手県大槌町にある江岸寺に御本尊の釈迦如来坐像を納めて無事完了となったのですが、当初はSNS上で仏像なんか不要だと誹謗中傷を書き込まれたりもしました。一方で喜んでくださる方々もおり、毎年現地に通う中で、町の景色、被災地の皆さんの表情や言葉が変わっていくのを目の当たりにしてきました。

毎年、震災法要とともに仏像を彫る木材をその場に設置し、参列した方々に仏さまと縁を結ぶため順番に鑿を入れていただいたのが、鑿入れ式です。亡くなったご家族の数だけ何度も彫らせてくれという女性もいて、心を締めつけられました。また、ご家族を亡くされ生きる気力を失っていた江岸寺のご住職ご自身も深い悲しみの中にありました。6年目の3月11日。集まった方々に「この仏さんに皆さんの哀しい想いを持っていってもらいましょう」と仰った住職の言葉からお気持ちの変化を感じられ、その瞬間、続けてきて良かったと思えたのです。

納めた仏像はたとえるなら千羽鶴のようなもの。いろいろな形で関わって下さった人たちの想いが、彫り出すことで紡がれて御縁が形となり、その仏像はこれから何百年にもわたって人々の祈りの対象となる。

震災から十年、いままた新型コロナの惨禍のもと、世の中は混沌としつつあって宗教離れも進んでいます。それでも、きっと人は祈り続けていくでしょうし、仏さまを彫り出す行為はまさに祈ることなのだと思います。

それまで自らを「仏師・彫刻家」と称していたのは、あくまで職人である仏師と、何を作るべきかを自らに問う彫刻家という、相反するものが自分の中に違和感なく存在していたからでした。もう一度初心に立ちかえって、仏師として新しい祈りの形というものを残していきたい。仏さまの言語を間違いなく通訳し紡いでいくために、技術を向上させねばならない。いまはそんな風に自らの意識も変わってきた気がしています。

Gizan Kato

Profile

加藤巍山かとう・ぎざん[仏師・彫刻家]

1968年東京生まれ。高村光雲の流れを汲む仏師の下で修業し、高村光雲より五代を意味する「自光雲五代」を標榜する。儀軌に準拠した仏像制作の一方で、日本の古典や歴史、仏教や神話を題材とした作品も制作。令和元年に比叡山延暦寺浄土院にて得度。仏師・三浦耀山とともに、被災地の寺社へ仏像を納める〈縁−Enishi−仏像奉納プロジェクト〉を立ち上げる。

(週刊新潮2021年3月18日号掲載)

さくらプロジェクトについて

野村グループは、東日本大震災直後から、さまざまなかたちで復興に向けたお手伝いをさせていただいています。その一つ、「さくらプロジェクト」は津波で甚大な被害を受けた宮城県亘理郡山元町の戸花山に桜を植え、名所にすることを目的に地元グループ「戸花山桜の会」の皆さんと共に実施している活動です。2012年に開始して以来、社員ボランティアが現地に赴き、桜の植樹とその後の育成管理、山道整備、自然保護などを行っています。

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