ESG:2022年の注目イベント

2021年は気候変動対策を中心としてESG分野の取組みが大きく前進した1年でした。とはいえ、気候変動対策にはまだまだ課題も多いのが実情。2022年に向けても、政策的に前進させるべき取り組みは数多くあることから、想定される重要なイベントを以下にまとめました。

2~3月:日本で新クレジット市場設立に向けた動きに具体性

経済産業省によると、2~3月に掛けてGX(グリーントランスフォーメーション)リーグ構想に賛同する企業が募集され、9月以降には新クレジット市場を含めた実証実験が行われます。GXリーグ構想にどれだけの企業が参加するか、またGXリーグの下で課される努力目標がどの程度厳しいものになるかに注目が集まります。

2022年早い段階:TNFDが開示フレームワークのβ版を公表予定

気候変動分野ではTCFDによる開示フレームワークがデファクト・スタンダートとして認識されているように、生物多様性・自然資本分野の開示フレームワークであるTNFDについても、今後、認識が広まることが想定されています。2023年の正式なTNFD勧告に向けて、どこまで具体的・定量的な開示が可能になるか、その環境整備が注目されます。なお生物多様性に関しては、NGFSも2022年の早い時点で報告書を公表する予定。

  • TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures、気候関連財務情報開示タスクフォース
  • TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures、自然関連財務情報開示タスクフォース
  • NGFS:Network for Greening the Financial System、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク

4月:東京証券取引所で新市場区分の運用開始

4月から東京証券取引所ではプライム・スタンダード・グロースの3市場に区分変更がなされ、プライム銘柄については、TCFDに準拠した気候変動関連財務情報の開示が、事実上、義務化されます。日本企業はTCFD開示を徐々に進めてきましたが、一層の広がりを見せることになると思われます。TCFD開示の「質」を巡る議論が、政府・投資家の間で高まる展開に期待です。

4月:COP15 第2部開催

4月25日~5月8日、中国・昆明において、生物多様性のCOP15・第2部が開催されます。生物多様性に係るグローバルな目標として、2010年代には「愛知目標」が掲げられていましたが、今回のCOP15・第2部では、2020年代の新目標の合意が目指される見通し。COP26で合意された新たな森林保護目標(2030年までに森林破壊を停止する、など)も踏まえつつ、ドラフト段階から更なる踏み込みがあるかに注目です。

6月:日本でクリーンエネルギー戦略の取りまとめ

既存のグリーン成長戦略とエネルギー基本計画を前提としつつ、クリーンエネルギーを中心とした社会システムへの転換を経済成長のエンジンにするための戦略が練られる見込み。なお12月16日に行われたクリーンエネルギー戦略に関する政府会合では、(1)エネルギーを起点とした産業のGX、(2)GX時代の需要サイドのエネルギー構造転換、(3)GX時代に必要となる社会システム・インフラ導入、がクリーンエネルギー戦略で深めるべき論点として掲げられています。

6月まで:ISSBが気候・サステナビリティ分野に関する情報開示基準を公表予定

ISSBは、既に気候・サステナビリティ分野に関する開示基準のプロトタイプを2021年11月に公表していますが、それらに寄せられた産業界等からのコメントを反映した最終版が公表される見込みです。プロトタイプでは、気候変動分野に係る開示基準において、スコープ3排出量の開示がスコープ1ないし2と同列に扱われています。自社を超えたサプライチェーン全体の排出量を対象範囲とするスコープ3は、計測が困難であることなどから慎重に扱われることが多かったため、ISSBのプロトタイプは従来の開示枠組みから一歩踏み込んだ内容で、最終版でもスコープ3開示に係るスタンスが維持されるかに注目。

  • Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

(出所)環境省

2022年初夏:ダボス会議開催

毎年1月に開催されるダボス会議は、欧州におけるコロナの感染拡大を受けて2022年も初夏までの延期が決まっています。ダボス会議はあくまでビジネス界が主役のイベントではあるものの、ESGやサステナビリティを強く意識した活動が繰り広げられてきました。今回の年次総会でも、「ステークホルダー資本主義の加速」がテーマの一つとして掲げられています。

10月~11月:世界各国の主要イベント

中国共産党大会(10月中旬見込み)、米国中間選挙(11月8日)、COP27(11月8日~20日)が予定されています。世界の二大大国となった米中が、ほぼ同時期に政治イベントを迎えることもあり、政治的な緊張感の高まりが予想されます。地政学リスクの高まりはESG投資の機運を下押しする可能性があり、特に注意すべきなのが、米国の中間選挙で民主党が多数派を確保できなかった場合、中間選挙以降の気候変動対策が進展しにくくなる可能性があります。

野村證券リサーチレポート「野村ESGマンスリー(2022年1月)」(2022年1月12日)より

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