メタバースと脳科学とAIの進化

メタバースへの没入感を上げるために、ブレインマシンインターフェイス(BMI)の開発が進み、脳とインターネットが接続できるようになりつつあります。野村では4段階を経て、脳とインターネットの融合が進化していくと考えています。

※BMI技術とは、脳から信号を取り出し、それを利用してコミュニケーションや運動の補助などを行うこと(出所:内閣府)

第1段階は脳波によるインターネット検索及びチャット。侵襲型であるものの、脳波から文章を生成する技術の精度は上がってきており、実用化は近いと見ています。

第2段階は脳への疑似感覚の生成。脳の特定部位に刺激を与えることで味覚、嗅覚、触覚を再現するもので、なかでも視覚の再現技術は視覚障がい者向けの義眼に応用が可能です。現在、侵襲型のデバイスを使って、点字より若干複雑なドットパターンを脳にイメージとして送り込むことができます。携帯電話のディスプレイが30年弱で低解像度のモノクロ液晶からカラーフルHDまで進化したことを考慮すると、将来は脳内で高精細なカラーの画像を再生し、視覚障がい者が視力を取り戻すこともできるかもしれません。

第3段階は、記憶の書き込みと読み出し。脳科学の発展によって記憶のメカニズムが解明され、AIの活用によって脳波と記憶内容の紐づけができれば可能になると考えます。インターネットから直接必要な知識を得て記憶し、また、自分が得た知識や経験をネット上で共有することができるようになるかもしれません。

第4段階は人格のアップロードと再現。人間の意識がどのように生じているかはまだ解明できていないものの、IT業界では、米国の神経科学者Giulio Tononi氏によって提唱された統合情報理論をベースに、意識を定量的に計測して解明しようという動きが見られています。また、故人が執筆した書籍などをAIで解析することで、故人の疑似的な人格を再現する研究も進んでいます。AIと脳科学のさらなる進化でインターネット上に記憶や人格などを含めた脳をアップロードする道が開ける可能性が出てきたと考えています。

野村リサーチレポート「メタバースと半導体製造装置業界(5):BMIの先は脳とインターネットの結合」(2022年4月)より

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