グリーントランスフォーメーション:年末にかけて加速すると期待

今後日本のGX(グリーントランスフォーメーション)関連政策の中心となるであろう「GX実行会議」の第1回が、7月27日に内閣官房にて開催されました。大きな議論の論点として、(1)日本のエネルギーの安定供給の再構築に必要となる方策、(2)それを前提として、脱炭素に向けた経済・社会、産業構造変革への今後10年のロードマップ、の2点が挙げられます。詳しく見ていきましょう。

(1)エネルギーの安定供給

老朽火力発電所の活用などにより、6月時点に比べれば電力需給のひっ迫度合いは緩和されているもの、依然として冬季については電力不足が強く懸念される状況です。

夏季・冬季の電力需要に対する予備率(2022年度)

夏季・冬季の電力需要に対する予備率(2022年度)

(注)厳気象時のもの。赤太字は安定供給に最低限必要な水準である3%を下回るもの
(出所)内閣官房資料より野村作成

政府は電力需給ひっ迫の背景を5つに整理し、今後、これらを踏まえた対応策が議論されるとみられています。再エネ・蓄電池・省エネの促進に加え、原子力発電所の再稼働等に関して政治決断が必要な事項の整理が進むと見られます。

電力需給ひっ迫の5要因

  • 電力自由化の下で供給力不足を回避するための事業環境整備の遅れ
  • 原子力発電所の再稼働の遅れ
  • 世界的な脱炭素の加速に伴う影響
  • 自然災害の多発による供給力の低下
  • 想定を上回る気象状況などによる需要増大

(出所)内閣官房資料より野村作成

(2)脱炭素に向けた10年間のロードマップ

脱炭素に向けた10年間のロードマップに含まれる5つのイニシアチブが示されました。これら5つのイニシアチブについて、今後10年間の取り組み内容が2022年末にかけて具体化されていくことになるでしょう。なかでも特に注目しておきたいのは(1)GX経済移行債(仮称)の創設、(3)GXリーグの段階的発展・活用、そして(5)アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略です。これらは、脱炭素に向けた金銭的インセンティブ(=カーボンプライシング)の在り方や、グローバルな連携に深く関係するためです。

脱炭素に向けたロードマップが策定される5イニシアチブ

  • (1)GX経済移行債(仮称)の創設:「成長志向型カーボンプライシング構想」の具体化など
  • (2)規制・支援一体型投資促進策:成長に資する支援策の効果的・効率的な執行のあり方など
  • (3)GXリーグの段階的発展・活用:GXリーグにおける排出量取引の実施方法
  • (4)新たな金融手法の活用:グリーン/トランジション/イノベーション・ファイナンス案件の更なる拡大に向けた施策の検討
  • (5)アジア・ゼロエミッション共同体構想など国際展開戦略:先進国とのイノベーション協力とアジア・ゼロエミッション共同体構想の実現による協力体制の強化

(注)各イニシアチブの下に記載した内容は、それぞれのイニシアチブにおける主な論点の例
(出所)内閣官房より野村作成

例えば、(1)GX経済移行債(仮称)の創設については、償還財源を巡る議論がポイントになると考えられます。政府は10年間で150兆円の官民投資が脱炭素に向けて必要であると試算していますが、そのうち20兆円がGX経済移行債(仮称)で調達されることになっており、年間2兆円の財源が必要になる計算です。消費税でいえば1%弱の引き上げ幅に相当する金額で、決して小さな調達額ではありません。排出量取引制度や炭素税を財源とすることも考えられるものの、今後GX実行会議の場において具体的な財源の議論が行われるかに注意が必要でしょう。

この点に関連して注目されるのが、(3)GXリーグの段階的発展・活用です。GXリーグは、国際ビジネスで勝てる企業群を生み出すための産官学の仕組みと定義されていて、既に440社が参加を表明しています。GXリーグの取り組み事項は複数に亘り、なかでも注目されるのがGXリーグにおける排出量取引。世界的な脱炭素の動きを踏まえ、既に日本政府はカーボンプライシングに関する取り組みを進めてきました。2022年9月には東京証券取引所において新しいカーボン・クレジット市場の実証事業が開始し、相対取引が中心となっているカーボン・クレジットに、市場取引の場が提供されることになります。

最後に(5)アジア・ゼロエミッション共同体構想などの国際展開戦略について、貿易や技術協力などを巡る国際的な動向は、今後ますます注目を集める可能性が高いと思われます。特に、東南アジア地域については地政学的な観点からも注目が集まりやすく、米国が主導するIPEF(インド太平洋経済枠組み)などは、脱炭素・ESG時代の国際連携において重要なプロトタイプに発展する可能性があります。GX実行会議においても外務大臣が構成員に含まれており、諸外国との連携が意識されています。東南アジア諸国を眼目に置きつつ、アジア・太平洋地域における脱炭素・ESGの取組みの在り方について、GX実行会議で検討が深まる可能性に注目です。

野村リサーチレポート「野村ESGマンスリー(2022年8月)」より

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