メタバースに期待される社会課題の解決

メタバース上では、ユーザーはアバターという擬人的なキャラクターを作成し、アバターが仮想空間の中で動き、肉声若しくは人工的に加工された声で話し、またはチャットを行います。アバターは必ずしも人間である必要はなく、メタバースの世界では自分が望む性や容姿、ハンディキャップを超えて行動することができます。さまざまな理由から人間関係や社会から距離を置いている人にとっても、メタバースは社会活動への参加のハードルを下げるとともに、癒しの場となるでしょう。実際、簡易なAIによる仮想キャラクターによる応援であっても、レッスンやリハビリなどの持続に大きな効果があることが判明しています。現在、AIによる疑似人格は人間と区別がつかない水準に進化しつつあることからも、メタバース内でAIのアバターによるセラピーや癒しを求めるユーザーが増加すると思われます。

メタバースを活用することでバリアフリー社会の構築が大きく進むと期待

メタバースは、SDGsが掲げる重要課題である「持続可能な都市の構築」、そしてその中で鍵になる障がい者の社会進出や高齢者の活躍という社会目標を達成する上で、極めて有効な技術だと考えられます。経済活動への参加が可能になることで、自身・家族の生活の質の改善が期待できるほか、社会としても貴重な労働人口と消費人口を得ることにつながります。メタバースを活用してより良い社会を構築するためには、長期に亘って生計を立てられることが望ましく、メタバース内で収入を得て商品やサービスを購入できるといった、経済活動が完結できるようになることが需要です。

企業活動の延長としてのメタバース

メタバースでの経済活動についてはさまざま形態があり、商談、社内会議、セミナーなどの社会活動や企業活動の一部をメタバース空間に移そうとする流れがあります。たとえば、コンサートやセミナーを仮想空間で行い、収益を上げることも可能。コンサートなどのイベントでは、メタバースならではの自由視点、没入感、演出を加えることで、リアルなコンサートとは違った味付けを行うこともできるでしょう。一部の企業活動や社会活動をメタバース空間に移動させることで、障がい者の就学、就職などが容易になり、彼らが社会進出するハードルを低くすることができます。

メタバース空間固有の経済活動

現実の社会活動と直接リンクしない経済活動もメタバース空間内で行われています。たとえば、アバターに着せる服、アクセサリー、アバターのデザインなどの売買は、さまざまなメタバースで行われているほか、暗号通貨決済機能を実装しているものもあります。メタバースで開催したイベント、アルバイトで雇ったアバターに訪問者の案内や説明をしてもらうという雇用形態も見られます。

まだメタバースをライフワーク化するには早い

メタバース内での経済活動は参加者が未だ数十万人レベルで、裾野の広さが十分ではなく、現段階ではライフワークとするにはリスクがあります。今後、メタバースのユーザーが拡大し、安全な決済手段が実装されて売買のルールが整備され、メタバース空間での収益獲得と、メタバース内のショップでの物品、サービス購入などができるようになることが待たれます。

野村リサーチレポート「メタバースと半導体製造装置業界(3):社会課題の解決を果たす」(2022年3月)、「メタバースと半導体製造装置業界(6):メタバースでの恋愛」(2022年4月)より

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