ウェルス・マネジメント部門|価値創造に向けた戦略
2025年3月期目標に向けた進捗
お客様一人ひとりのニーズに的確にお応えできるよう、組織体制の見直しを継続的に行ってきました。2024年3月期は、対人でコンサルティングを提供するパートナー数を大幅に増員し、パートナー1人当たりが担当する顧客数の適正化を図りました。活況な相場環境も追い風となり、想定以上のスピードで人員再配置の効果が顕在化し、2024年3月期の税引前当期純利益(KGI)は、2025年3月期目標を前倒しで達成しました。
KPIやKGIの進捗/達成状況
※下記表は横にスクロールしてご覧ください。
2023年3月期/ 2024年3月末(実績) |
2025年3月期/ 2025年3月末(目標) |
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重要業績評価指標 (KPI) |
ストック資産 | 23.0兆円 | 22.3兆円 |
ストック資産純増 (投信分配金流出除く) |
7,020億円 | 8,000億円 | |
フロービジネス顧客数 | 169.2万件 | 146万件 | |
ワークプレイスサービス提供数 | 362.7万件 | 366万件 | |
重要目標達成指標 (KGI) |
税引前当期純利益 | 1,227億円 | 950億円 (2023年5月インベスター・デーにて公表) |
ストック型ビジネスへのシフト
これまで取り組んできた資産管理を通じたストック型ビジネスへのシフトが進捗し、ストック資産は、2025年3月期目標を上回る23.0兆円となりました。その結果、ストック収入は1,535億円、ストック収入費用カバー率は55%まで上昇し、収益構造の安定化につながっています。
フロー収入等の拡大
パートナー1人当たりの担当口座数を適正化し、お客様のニーズに合わせた幅広い商品・サービスを提供したことで、実際にお取引されるアクティブな富裕層顧客や新規顧客の口座開設が大幅に増えました。2024年3月期のフロー収入等は前年比で5割増加しています。また日本株式市場の活況や新NISA開始もあり、フロービジネス顧客数は2025年3月期目標を上回る水準となりました。
適切なコスト・コントロール
収支構造改革プロジェクトを通じて、2025年3月末を目標としていた200億円のコスト削減は、1年前倒しですべての項目を特定しました。固定費を中心にコスト水準が引き下がり、2024年3月期の税引前当期純利益率は大きく改善しています。
2030年に向けた取り組み
日本の富裕層・超富裕層が保有する純金融資産の総額は増加傾向にあり、今後もそのトレンドは続くと予想されます。このようなお客様は、複雑で多様なお悩みを抱え、対人でのコンサルティング・ニーズが強い傾向にあります。パートナーを重点的に配置し、資産管理サービスを提供することでお客様のニーズにお応えしていきます。
一方で、多忙な現役世代や、デジタルを介した手軽なサービスを好まれるお客様に対しては、アプリやオンラインサービス等の提供を通じて、お客様の利便性を向上させるとともに、必要に応じてデジタルとパートナーを組み合わせたサービス提供ができる体制構築を目指しています。お客様ニーズに沿った形でサービスをお届けすることで、少ないパートナー数でもお客様のアクティビティと利便性を維持・向上させていきます。
ウェルス・マネジメントビジネスの拡大に向けた顧客カバー体制

1 富裕層顧客のうち、一定の預り資産と資産管理サービスによる収益をいただいている口座
2 将来、富裕層となる可能性が高いと考えられる顧客層
3 プライベート・ウェルス・マネジメント
4 ウェルス・マネジメント
5 デジタル・カスタマーサービス
6 ネット&コール
1. 富裕層顧客のアクティブ口座拡大
2. 富裕層マーケットでの新規顧客開拓
1.富裕層顧客のアクティブ口座拡大と、2.富裕層マーケットでの新規顧客開拓の実現には野村の資産管理サービスの提供価値向上がカギとなるため、「商品・ソリューションの進化・拡充」と「パートナーによるサービスレベルの向上」に取り組みます。
野村には、経験や知識が豊富なパートナーが、富裕層のお客様と築いてきた信頼関係に基づきお客様の価値観まで理解して、課題やニーズを発見し、解決する力があります。また、グループの総合力を結集し、新たな商品やソリューションを創出することで、お客様の多様なニーズにお応えできる開発力も有しております。こうした力が世界中から多種多様な案件依頼を呼び込んでおり、これによりプロダクト・ソリューションのラインアップがさらに強化される、という好循環を確立しております。今後もこうした当社独自の強みを活かして商品やソリューションのさらなる進化・拡充を進めていきます。
パートナーによるサービスレベルの向上に向け、「付加価値の高いサービスを提供できるパートナーの確保」と「法人や富裕層顧客の的確な把握」に取り組みます。また、パートナーがより付加価値の高い業務に集中できるよう、事務処理業務等の電子化を進めると同時に、第二新卒を含めたキャリア採用を強化していきます。「法人や富裕層顧客の的確な把握」には、顧客セグメントをより精緻化することに加えて、外部データ等を活用することで、効率的・効果的に新規顧客の開拓を進めていきます。
3. エマージング・ウェルス顧客の獲得
ウェルス・マネジメントビジネスの持続可能な拡大には、富裕層となる可能性が高いお客様、いわゆる「3.エマージング・ウェルス顧客」に当社を選択いただくことが重要です。エマージング・ウェルス顧客を属性に分けると、下図の3パターンがあります。うち、カテゴリーB「収入等」やカテゴリーC「資産承継」を通じて資産を築く方々については、野村ならではのアプローチの「仕組み」があります。
カテゴリーB「収入等」を通じて資産を築く方々のうち、「上場企業の役職員」に向けてはワークプレイス(職域)で当社の強みを活かしたサービス提供を行っています。当社は従業員持株会ビジネスで55%という圧倒的なシェア、上場企業では約4割の主幹事比率をもっており、ワークプレイスを通じて証券口座開設を促すことができます。実際、富裕層顧客60万口座のおよそ1割は、ワークプレイスを通じて開設されています。今後、上場企業を担当するインベストメント・バンキングとの連携をさらに強化し、野村のワークプレイスならではのサービスに磨きをかけることで、エマージング・ウェルス顧客への導線を強化していきます。
カテゴリーC「資産承継」を通じて資産を築く方々に対しては、当社の強みである強固な富裕層顧客基盤を活かして相続関連サービスを提供することで、ファミリー全体での長期的なお取引につなげていきます。
エマージング・ウェルスの顧客属性

4. デジタルを活用した持続的なサービス提供体制の確立
「デジタルで手軽に情報収集したいが、投資の意思決定など重要な場面では誰かに相談したい」というお客様も大勢います。当社ではデジタルとパートナーをかけ合わせたサービスを提供するビジネスモデルの構築を進めています。少ないパートナー数でも、デジタルを活用することで、お客様ニーズに即したサービスを提供し、お客様のアクティビティと利便性を維持・向上させることは可能であると考えています。
デジタルサービスの基盤となる、資産運用アプリ「NOMURA」のログイン口座数は、2024年3月期は前年比で約3倍となり、直近、100万ダウンロードを突破しました。今後も投資の裾野拡大に向けて、多くのお客様にサービスをお届けできる体制整備を進めていきます。