ホールセール部門|価値創造に向けた戦略
2025年3月期目標に向けた進捗
2024年3月期は厳しい環境のなかでスタートしましたが、下期に「日本復活」の機運が高まり、市場環境は好転しました。業界全体としては厳しい一年でしたが、ホールセール部門の収益は四半期を追うごとに回復し、前年比12%の増収となりました。
KPIである収益/調整リスク・アセット比率やフィー・コミッション収益は順調に進捗しています。また、経費率は目標未達ながらも改善方向にあり、今後も戦略的施策を講じることで、さらなる改善を図っていきます。
KPIやKGIの進捗/達成状況
※下記表は横にスクロールしてご覧ください。
2024年3月期/ 2024年3月末(実績) |
2025年3月期/2025年3月末(目標、2023年5月インベスター・デーにて公表) | ||
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重要業績評価指標 (KPI) |
収益/調整リスクアセット比率 | 6.8% | 6%以上 |
経費率(経費/収益) | 94% | 86% | |
フィー・コミッション収益 | 12億ドル | 13億ドル以上 | |
重要目標達成指標 (KGI) |
税引前当期純利益 | 539億円 | 1,300億円 |
安定性
ホールセール部門では、より安定的でレジリエントなプラットフォームの構築が着実に進んでいます。オペレーティング・モデルの構造的な見直しやフロント・オフィスの合理化などを通じて、2023年のインベスター・デーで設定した1.5億ドルのコスト削減計画は、50%以上上回って進捗しています。また2024年3月期は、顧客ウォレット・シェア※1の拡大やリスク管理の改善により、より多くのビジネスからの収益貢献が見られ、業績の改善が続きました。収益がマイナスになる日も、約1%に抑制できています。
成長
グローバル・マーケッツでは、証券化商品が前年比30%以上の増収※2、エクイティ・プロダクトが約20%の増収※2となるなど、多くのビジネスで収益が拡大しました。顧客戦略を強化し、重点顧客との複数プロダクトの取引が増加したことで、2024年3月期の顧客フロー収益は前年比8%増※2となりました。海外インベストメント・バンキングも前年比約20%増収※2となり、収益の50%以上がリソース・ライト※3なビジネスから創出されています。さらに日本における優位性を活かすことで、日本のホールセール部門収益は、前年比27%増収となりました。
多様化
海外富裕層ビジネスでは、北アジアやドバイを含めたフランチャイズの拡大に注力した結果、預り資産が210億ドルに到達するなど、大きな進捗をみせた一年となりました。ネット資産導入額は55億ドル超、新規口座開設数は500超となり、収益は前年比で約50%増加※2しています。また、その他ホールセール・ビジネスとの相互紹介数も2020年3月期比で1.6倍に成長しました。
1 一顧客における当社シェア
2 米ドルベース
3 アドバイザリー、ECM、DCMを含む
2030年に向けた取り組み
2030年に向けたホールセール部門の注力ポイントは、 2025年3月期に向けたテーマと同じ「安定性」、「成長」、「多様化」です。顧客基盤を着実に広げ、市場シェアを拡大しつつ、コスト・コントロールの継続とコア分野への投資を進めていきます。また、これらを実現するために財務リソースが必要となりますが、ホールセール部門が毎年生み出す内部留保の一部を再投資(セルフファンディング)することで、自律的な成長を目指します。
重要業績評価指標(KPI) | |
税前ROE | 8-10%※4 |
収益/調整リスク・アセット比率 | ~6%※4 |
経費率(経費/収益) | ~80% |
フィー・コミッション収益 | ~19億ドル |
4 バーゼルIII最終化後
安定性 長期的に持続可能なリターンを創出するグローバルでコスト効率の高い基盤の構築
ホールセール部門では、異なる市場サイクルのなかで持続可能なリターンを生み出すことに注力しています。そしてバーゼルIII最終化ベースで、税前ROE 8-10%の達成を目指していきたいと考えています。規模の経済を実現し、コスト規律を維持すると同時に、長期的な構造改革などのコスト削減策を実施することで、80%前後の経費率を目指します。さらに、バーゼルIII最終化後も6%前後の収益/調整リスク・アセット比率を維持し、市場機会とリターンを踏まえてビジネス全体で使用リソースの最適化を図っていきます。
成長 リソース・ライト、安定ビジネスの割合を増加させていく
ホールセール部門の優先事項は、多様性のあるプラットフォームを構築し、財務リソースをあまり使わない、リソース・ライトな分野へと、ビジネス・ミックスを変えていくことです。今は、部門収益に占めるマクロ・ビジネスの割合が高いですが、2030年に向けて部門収益の70%程度をマクロ・ビジネス以外のプロダクトから生み出すことを目指します。同時に、ビジネス・ポートフォリオを多様化させるため、アドバイザリーや海外富裕層などのリソース・ライトなビジネス、およびスプレッド・プロダクト※5、エクイティ・プロダクトなどボラティリティが低く、収益性の高いビジネスを強化していきます。
私たちの成長戦略の重要な要素に、既に強みのあるビジネスをさらに強化し、グローバルに展開することがあります。加えて、安定的かつ持続的な収益拡大のため、引き続き、顧客基盤の強化に重点を置いていきます。インベストメント・バンキングでは、差別化されたコンテンツでリードしつつ、アグリテック※6やデジタルインフラ等の新たなサブセクターでカバー率を高め、顧客のウォレット・シェア※1拡大に注力していきます。グローバル・マーケッツでは、顧客のウォレット・シェア※1をさらに引き上げ、地域やプロダクトをまたいだクロスセルの拡大を目指します。
リソース・ライト、安定ビジネスによる成長
多様化戦略の核である海外富裕層ビジネスのさらなる拡大
1 一顧客における当社シェア
5 クレジット、証券化商品等
6 最先端の科学技術を農業に応用する事業分野
7 証券化商品のトレーディングを除く
8 エクイティ・デリバティブを除く
多様化 長期的に収益源の多様化を図ることにより収益の安定性を高める
ホールセール部門では、商品・顧客・市場すべてにおいて、多様化を目指しています。そのなかでも海外富裕層ビジネスの成長トレンドを維持することは、私たちの多様化戦略の重要なポイントです。グローバル・マーケッツとインベストメント・バンキングとのシナジーを最大限に引き出すことで、海外富裕層ビジネスにおいて、アジアでトップ15入り、預り資産600億ドルを目指しています。また、海外アドバイザリー・ビジネスの拡大は、フィー・コミッション収益を19億ドルまで押し上げるための最優先事項です。顧客面では、特にリアルマネー※9や法人顧客との取引関係を強化し、顧客基盤をさらに拡大していきます。そして、他部門との連携を増やし、野村グループ全体の成長を目指します。
9 投資主体が年金基金や投資信託、生命保険会社などの投資家の資金