2030年に向けた戦略

2025年3月期のホールセール部門収益は前年比22%増の1兆579億円、収益/調整リスク・アセット比率は7.6%となり、税前利益は1,663億円、15年ぶりの高水準となりました。各ビジネスがバランスよく成長し、顧客基盤も拡大するなど、より安定的かつ成長に対応できるプラットフォーム構築に向けて着実に前進しています。お客様との関係強化やクロスセルを通じて、グローバル・マーケッツの顧客フロー収益は2023年3月期対比で25%増加、インベストメント・バンキングは同39%増加、さらにマルチプロダクト・トラクション※1も同8%増加しています。私たちのグローバル・ビジネスは着実に成長し、市場サイクルを通じて成果を上げられる、多様化した事業基盤を構築しています。
 

今までの戦略的な取り組みを通じて、収益基盤を強化し、より高いリターンをもたらすビジネスにリソースを再配分することで収益性を改善しました。特に、シニアリーダーシップを含む人材への継続的な投資が、生産性の向上に寄与しています。例えば、海外インベストメント・バンキングのマネージング・ディレクターの生産性※2は、2023年3月期対比で30%以上向上、グローバル・マーケッツ全体の生産性は約20%向上しました。人員数をほぼ横ばいに保ちつつ、収益を増加させた結果です。厳格なコスト管理も相俟って、経費率は2023年3月期の96%から2025年3月期には84%へと改善しました。
 

また、海外富裕層ビジネスも順調に成長し、運用資産残高は290億ドルに達しました(2023年3月期対比で約95%増加、2020年ビジネス構築以降でほぼ4倍)。このように、ビジネスの多様化と厳格なリスク管理を組み合わせることで、プラットフォーム全体の安定性が増し、収益ボラティリティを20ポイント※3低減させることができました。

ホールセール部門収益グラフ

ホールセール部門は、この好調なモメンタムを維持しながら2030年に向けて取り組んでいきます。各アセットクラスをバランスよく拡大させることで、2030年までに15~20%の収益成長を目指しています。また、お客様との関係強化とシェア拡大にも取り組んでいきます。スプレッド・プロダクト、エクイティ、アドバイザリーなどを戦略的に拡大し、市場シェアの着実な獲得を目指しつつ、伝統的に強みをもつマクロ・プロダクトや日本ビジネスをさらに強化します。そして部門やプロダクト、地域を超えたクロスセルや連携を強化することで、顧客接点を拡大していきます。
 

成長戦略とともに、厳格なリスク管理と固定費に対する積極的なアプローチを通じて、事業基盤の効率性向上も進めていきます。加えて、アジアや中東などの新たな市場で海外富裕層ビジネスのフランチャイズを拡大し、事業の多様化を推進していきます。
 

このようなアプローチを通じて、私たちは、市場変動に対応できるバランスの取れた強靭なプラットフォームの構築に引き続き注力し、持続可能な収益性を実現していきます。そして、2031年3月期に向けて税前ROE 8~10%※4、収益/調整リスク・アセット比率約6%※4、経費率80%の達成を目指します。

※1 マルチプロダクト・トラクションとは、過去60カ月以内に複数回(2回以上)の手数料発生があったお客様に対して、直近12カ月間で計上された収益
※2 1年以上「マネージング・ディレクター(MD)」のタイトルをもつ担当者数(日本の駐在者は除く)
※3 2025年3月期対2023年3月期。変動率は変動係数(1日の収益の標準偏差÷平均)で測定
※4 バーゼルIII最終化後

安定性

ホールセール部門では、市場サイクルを通じて持続的にリターンを創出することに注力しており、税前ROE 8~10%(バーゼルIII最終化ルール適用後)を目指しています。
 

そのためには、まず、安定的かつ持続可能な利益の確保を、重要な柱として位置づけています。マクロ・プロダクト、スプレッド・プロダクト、エクイティ、インベストメント・バンキング、海外富裕層ビジネスといったバランスの取れたビジネス・ポートフォリオを構築することで、収益の安定性を高めるとともに、市場サイクルの変動に対応していきます。また、リスク管理フレームワークの強化、トレーディング管理体制の徹底、全事業に対する包括的なストレステストの実施により、業績変動リスクをさらに低減することを目指します。
 

2点目は、コストの包括的な見直しを通じた、コスト効率の向上です。ITアーキテクチャーの標準化、ロケーション戦略の推進、組織構造の合理化といった構造改革の取り組みを通じて、コーポレート・コストの最適化に注力していきます。コスト削減で捻出した一部を成長に再投資しつつ、2031年3月期までに経費率約80%を達成すべく取り組んでいきます。
 

3点目は、部門利益の一部をビジネスに再投資し、自律的な成長を実現することです。戦略的な投資や外部パートナーシップを通じて、資本効率とビジネスの規模拡大を追求していきます。そして、2031年3月期までに収益/調整リスク・アセット比率約6%(バーゼルIII 最終化ルール適用後)の達成を目指します。

成長

ホールセール部門の成長戦略はトレーディング、ファイナンシング、ストラクチャリング/ソリューション、アドバイザリー、フィービジネスをバランスよく伸ばし、市場サイクルを通じ安定した成果を目指します。
 

日本の優位性やグローバルな強みを強化し、人材の生産性向上にも取り組みます。プライベート・クレジットやストラクチャリング/ソリューション、欧州・アジアのエクイティ、海外富裕層ビジネス、米国インベストメント・バンキングなどを拡大し、市場変化に対応してマクロ・プロダクトの収益機会も活かします。
 

グローバル・マーケッツでは地域の専門知識を他地域へ展開し、欧州・アジアのエクイティや証券化商品が利益成長に貢献しています。インベストメント・バンキングは日本の優位性を強化し、多様化で成長を加速。海外では規模拡大と他地域への展開に注力し、効率化で生産性を高めていきます。アドバイザリーに注力しつつ、引受とソリューションで案件獲得とクロスセルを推進します。
 

顧客基盤のさらなる拡大に向けて、新規顧客セグメントへの投資や部門間連携を強化し、グローバル提案でウォレット・シェアを拡大するとともに、生成型AIの導入で生産性と効率を向上させます。

多様化

ホールセール部門では、商品、お客様、市場のすべてで多様化を推進しています。この戦略の中核をなす海外富裕層ビジネスでは、これまでの成功を踏まえ、2031年3月期までにアジアでトップ15に入ることを目指しています。

海外富裕層ビジネスの成長を加速(グラフ)

この実現に向けて、北アジア、南アジア、東南アジアで今までのモメンタムを維持するとともに、中東などの新たな地域での成長機会も追求しています。
 

また、事業会社、保険、年金、フィナンシャル・スポンサーなどの顧客セグメントにより一層注力し、顧客基盤のさらなる拡大を図ります。加えて、高い成長が期待されるインドや中東などの新興市場における機会も引き続き追求していきます。

最後に、ビジネス、地域、部門を超えた連携は、収益ポテンシャルを最大化する戦略の重要な推進力となっています。ホールセール部門は、シナジーやパートナーシップを活用して資金調達方法を多様化するとともに、オリジネーションの強化や、貸出機能を広げるためのエコシステムの構築を進めています。