富永 健司
- 金融市場でAIに関連するリスクを認識すると共に、安全で、信頼性が高く、倫理的な方法でAIを開発・評価・導入する「責任あるAI(RAI)」の考え方が重要視されるようになっている。RAIを積極的に推進している国として、オーストラリアが挙げられる。
- 同国では、オーストラリア証券投資委員会が、2024年10月に公表したAIの導入とリスク対応に関する調査結果の中で、金融サービスに関する規制は技術の進展に中立であるとの見方を示し、RAIに関連する既存の規制要件の遵守を求めている。
- オーストラリア連邦科学産業研究機構は2024年4月、同国の資産運用会社と共同でRAIに関するリスク評価の枠組みを開発・公表している。同枠組みにより、投資家は企業に必要なRAIに関するトピックを把握し、エンゲージメントに活用することができる。
- オーストラリアの金融機関は、政府が示すRAIに関する原則も活用しながら、(1)AI関連サービスの設計・開発・展開を管理するための原則の策定、(2)AIの適切な使用に関する研修プログラムの開発と実施、(3)データ管理や戦略の強化、(4)RAIを支援する民間コンソーシアムへの参加と課題対応といったRAIに関する取り組みを推進している。
- 日本の金融市場において、今後、金融市場におけるRAIの取り組みがさらに進んでいくと共に、投資家がRAIを考慮した投資を行なうことで、AIの責任ある活用が進展することが期待される。