佐々木 遼太
- 米国企業では、福利厚生の一環として、寄附・慈善活動を促進する制度を導入することが一般化している。そうした中、ドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を勤務先経由で利用する「職域DAF」が注目を集めている。DAFとは、寄附者(ドナー)から受け入れた資産を運用し、ドナーの指示に基づき非営利団体への助成を行う基金である。職域DAFの機能は一般のDAFと変わらないが、給与天引きによる寄附が可能となる等の特徴を有する。
- 職域DAFに注力している米国の金融機関として、モルガン・スタンレーがある。同社は従前、主に富裕層顧客を対象にDAFを紹介していたが、2023年10月にモルガン・スタンレー・アット・ワークと呼称される職域事業の一環で寄附サービスの提供を開始した。当該寄附サービスは、職場という身近な場を通じて、従業員が多様な価値観を表現する、あるいは寄附税制の優遇措置を活用するために、職域DAFを提供するサービスである。
- モルガン・スタンレーから紹介を受けたドナーのDAFを運営するのは、モルガン・スタンレー・グローバル・インパクト・ファンディング・トラスト(MS GIFT)という財団である。MS GIFTは、職域DAFを運営するにあたって、DAFプラットフォーマーのティフィン・ギブと連携することで、DAFの寄附・運用・助成にかかる業務効率化を図っている。
- 日本においても、若年層を中心に寄附文化が浸透しつつある。そうした中、今後ますます、寄附ニーズを有する従業員や寄附を福利厚生制度に位置づけたいという企業が増加していくことも十分に考えられよう。これらの状況を踏まえれば、日本の金融機関も、富裕層向けの紹介に留まらず、職域事業としてもDAF事業を展開することで、顧客満足度の向上、更には顧客基盤の拡大に繋がるのではないだろうか。