野村 亜紀子
- 多くの企業が人的資本経営の観点で従業員のウェルビーイング(幸福な状態)に着目する中、その構成要素であるファイナンシャル・ウェルネス支援の重要性も認識されつつある。資産形成関連の福利厚生制度の新たな選択肢として注目されるのが、職場つみたてNISAである。従業員が職場経由でNISAを利用する制度で、企業が奨励金を付与することもできる。
- 野村資産形成研究センターの「第4回ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート」によれば、職場つみたてNISAの認知者は全体の10.7%で、利用者は同3.9%だった。利用者の特徴を見たところ、調査対象全体に比べてファイナンシャル・ウェルネスが高く、勤務先への帰属意識や、生産性に関する自己評価も高かった。企業としては、人的資本拡充の観点から、同制度の導入を検討する余地が十分にあると言えよう。
- 勤務先に職場つみたてNISAがあると認知しながら利用していない人(認知・非利用者)も存在する。利用者に比べてファイナンシャル・ウェルネスや帰属意識、生産性の自己評価が低く、換言すれば、認知・非利用者を減らすことはこれらの向上に寄与しうる。企業の積極的な働きかけにより行動変容する可能性もあり、利用率の向上は、導入企業が早急に取り組むべき事項と言えた。
- 米国の第2次トランプ政権による関税政策等の影響を受け、2025年4月初旬以降、内外株式市場が変動するといったことも起きている。NISAの利用者においては、長期・積立・分散投資の考え方を改めて確認することが重要だが、従業員目線での効果的な情報発信など、職場経由であることの長所が発揮される局面もあるだろう。職場つみたてNISAの導入・利用が進み、安定的な資産形成の一翼を担う存在になるのか、引き続き注目していきたい。