小立 敬

要約

  1. バーゼル委員会は2025年6月、気候関連金融リスクに関する開示の枠組みを最終化させた。2023年11月のバーゼル委員会による市中協議文書では、バーゼルIIIの枠組みの中で開示を通じて市場規律を促す「第三の柱(Pillar3)」として位置づけられていたが、最終化された枠組みは、各法域が適用の要否を判断する自発的な開示の枠組みとして位置づけられている。
  2. 気候関連金融リスクの開示が第三の柱から後退した背景として、トランプ政権誕生後の米国が気候関連の取組みを完全に撤回するようバーゼル委員会に圧力をかけたことが指摘されている。また、気候関連金融リスクの複雑さや気候関連金融リスクの変化する性質に起因する課題も指摘されてきた。
  3. バーゼル委員会によって最終化された気候関連金融リスクの開示の枠組みについては、特に欧米において導入される見込みが低いことが想定される。今後、金融庁が気候変動リスクの開示を巡る海外の状況を受けて、国内適用の要否についてどのような判断を下すのかが注目される。