江夏 あかね
- 世界銀行は2025年6月10日、「カーボンプライシングの現状と動向2025年版」と題した年次報告書(以下、年次報告書)を公表した。
- 年次報告書では、カーボンプライシングの導入・拡充が世界的に進展し、2025年4月1日時点で43の炭素税と37の排出量取引制度(ETS)が運用され、カバー率は世界の温室効果ガス(GHG)の3割近くに達している旨が紹介された。その一方で、政治経済状況を踏まえて制度が廃止に至ったケースもあるほか、足元の排出量加重平均炭素価格(2025年=19米ドル/二酸化炭素換算トン〔tCO2e〕)が脱炭素化に向けて依然として不十分な水準と指摘された。
- カーボン・クレジットについては、全体的には需要が増加傾向にあるものの、分野や取引所を介すか否かによって価格水準に差があることや、未償却のクレジットのうち大部分が何年も前に発行された「レガシー」クレジットに関連していること等が取り上げられた。
- 日本では、カーボンプライシング政策の一環として、排出量取引制度(GX-ETS)の本格稼働が2026年度に控えている。今後、日本におけるGX-ETSを含むカーボンプライシング政策が脱炭素社会への移行に真に貢献するものとなるためには、日本の政策のみならず、経済社会環境が同一ではないものの、世界各国・地域のカーボンプライシングの動向も把握し、政策全体の最適化に継続的に取り組んでいくことが大切と言える。