宋 良也、塩島 晋

要約

  1. 中国では近年、人工知能(AI)技術の開発・応用が加速している。国家インターネット情報弁公室など7政府部門が2023年7月に公布した「生成AIサービス管理暫行弁法」(以降、管理弁法)は、同時点で世界初の生成AIに特化した規制として位置付けられる。
  2. AI全般に対する包括的な国家レベルの法律は2025年7月末時点で定められていないものの、管理弁法のような特定の分野・業種におけるAI規制は複数制定されている。管理弁法では生成AIの規制対象、適用範囲、サービスの提供・使用に関する原則、サービス提供者の義務等が定められている。主な特徴としては、(1)奨励策と罰則の併用、(2)分類・等級付けの管理監督方針の適用、が挙げられる。
  3. 中国の金融分野におけるAI規制の進展状況を見ると、法的拘束力を持たないガイドラインを中心とする銀行業向けのAI規制が制定されている一方、証券業では限定的なAI規制導入に留まっている。このように金融業におけるAI規制の整備は道半ばであるものの、各金融機関では既に、内部運営及び顧客へのサービス向けに、幅広い場面でAIを活用している。
  4. 中国におけるAI規制の進展に関する今後の論点としては、(1)包括的なAI全般に関する法律・規制の制定、(2)金融業におけるAIの分類・等級付け管理の進め方、(3)外資系企業のAI利活用の対応、が挙げられる。