江夏 あかね

要約

  1. 地方債市場では2025年10月、「レジリエンス」をテーマにした債券の発行が相次いだ。横浜市は「浸水レジリエンス債」、東京都は「TOKYOレジリエンスボンド」、三重県は「みえグリーンボンド(水害レジリエンス枠)」を発行した。これらの債券は、「防災・減災×金融」の新たな手法に対する投資家からの注目も背景に、円滑に消化された。
  2. 3つの債券は、持続可能な開発目標(SDGs)に資する債券(SDGs債)としての取り扱い等でそれぞれ異なるアプローチが採られた。横浜市はSDGs債ではなく通常の地方債として発行した。東京都と三重県はSDGs債として発行したが、東京都は新たにレジリエンスボンドのフレームワークを策定して発行した一方、三重県はグリーンボンドにレジリエンス枠を設ける形での発行になった。しかしながら、3つの債券に共通しているのは、発行体が災害対策を通じたレジリエンスの強化にコミットするとともに、同テーマの債券発行の継続を念頭に置いていることと言える。また、横浜市と三重県については、従来から連携していた東京海上日動火災保険が投資家となったことも通じて、利率を抑える形での起債が実現した。東京都についても、ユーロ市場にて旺盛な投資需要を得て良好な条件での起債となった。
  3. 日本の地方公共団体による防災・減災対策は、堤防や防潮堤等の物理的なインフラ整備といったハード事業に加え、人々の行動や情報、組織体制等、非構造的な側面から被害を軽減するためのソフト事業等、多岐に亘っており、近年の自然災害の頻発化、甚大化を踏まえて、多くの地方公共団体が対策を拡充している。今後も地方公共団体による防災・減災対策が果たす役割は大きいと想定される。
  4. 地方債市場にレジリエンスをテーマとした債券がさらに浸透していくためには、対象事業の実施や投資家との対話(エンゲージメント)を通じて地域の災害対応力が強化できるか、すなわちインパクトがしっかりと創出されるかがカギになると考えられる。