西山 賢吾
- 代表的な議決権行使助言会社のグラス・ルイス(Glass Lewis)は2025年10月15日、自社のビジネスモデル強化策の一環として、自社の見解に基づく議決権行使に対する単一の助言(推奨)を2027年にも事実上取りやめる方針であることを公表した。2027年以降は顧客の多彩な見方を反映した複数の考え方を助言として提示する方向である。
- 方針変更の理由の一つとして、AIなどの技術向上が議決権行使プロセスにも利用できるようになってきたことを同社は挙げているが、米国を始め各国・地域で、議決権行使助言会社が企業経営に与える影響への懸念と批判が強まっている点も考慮されたと推測される。
- 議決権行使助言会社の助言は2010年代頃までは一定の影響力を有していたが、近年ではグローバルな機関投資家は独自の議決権行使基準を策定し、そのコンセンサスを議決権行使助言会社が助言方針として取り入れているような事例も見られている。また、議決権行使助言を含めた機関投資家のスチュワードシップ活動支援のために必要な情報を提供することが、議決権行使助言会社にとっての主要なビジネスとして重要視されてきている。
- 確かに今回のグラス・ルイスの方針変更は、議決権行使助言会社が機関投資家の議決権行使をリードした時代の終焉を示すものとして象徴的と言える。一方、既にグローバル企業や機関投資家を中心に、収益拡大や企業価値向上を目指しつつ、グローバルに求められる規律も意識しながら、相互理解を深めるための対話(エンゲージメント)活動に力を注いでおり、彼らの行動への影響は小さいと考える。他方、議決権行使プロセスにおいてAI活用が進むと、一見画一的であるが、多くのデータと明確なロジックに裏打ちされた、企業側にとって「反論余地の乏しい」判断が増える可能性も考えられるため、今後の推移は留意したい。