五島 佐保子、磯部 昌吾
- 気候関連開示規制の導入を巡って揺り戻しも起こる中、新たに幅広い金融事業の排出量計測の議論が始まっている。目下、温室効果ガス(GHG)プロトコルは、投融資に加えた金融事業の排出量の任意計測を扱う区分「スコープ3カテゴリー16」の新設を議論している。
- GHGプロトコルは、従来から投融資以外の金融事業を任意の計測対象としてきたが、範囲や扱いは明確ではなかった。この点、カテゴリー16では、証券引受や合併・買収(M&A)仲介、投資助言、デリバティブ、現預金、保険引受、年金資産を含めることを検討している。
- カテゴリー16に含まれる金融事業の排出量計測を巡っては、これまでもGHGプロトコル以外の場において部分的には議論が行われてきたところ、その扱いや意義を巡る見解は様々となっている。
- カテゴリー16の排出量計測には課題も多い。GHGプロトコルは同一の排出活動に対する排出量の重複計算を従来から求めてきたが、カテゴリー16の新設により更に上乗せされるほか、計測手法も確立されていない。また、対象となる金融事業が持つ経済・社会的な意義との兼ね合いも論点となり得る。
- 経済全体で脱炭素を実現するためには、技術革新やコスト低減の取り組みも欠かせない。エネルギー安全保障や安価なエネルギーの確保、国際競争力といった要素も含めて、カテゴリー16がこうした分野への資金フローの活性化にどう貢献するのか注視する必要があるだろう。