野村 亜紀子

要約

  1. 物価高対策の重要性が指摘される中、企業による従業員の資産形成支援は、その観点でも有用な可能性がある。従業員が職場経由でNISA(少額投資非課税制度)を利用できるようにする職場つみたてNISAは、資産形成に関する福利厚生制度の新たな選択肢として注目される。企業としては、従業員のファイナンシャル・ウェルネス(金融面で幸福な状態)向上が、人的資本拡充、企業価値向上へと繋がることも期待している。
  2. 野村資産形成研究センターが2025年9月に実施した「ファイナンシャル・ウェルネス(お金の健康度)アンケート」(従業員1万人アンケート2025)によれば、職場つみたてNISAの利用者は全体の4.5%で、若年層の方が利用率が高かった。利用者は全体に比べて、勤務先への誇りや生産性に関する自己評価が高く、ファイナンシャル・ウェルネスも高かった。
  3. インフレ対応について、職場つみたてNISA利用者は、資産形成制度の拡充、研修会の開催といった、職場を通じた支援への期待が高かった。調査対象全体においても、資産形成の目的として「インフレに備えて」の回答割合が上昇しており、インフレ対応手段の一つとして職場つみたてNISAを打ち出せば、従前に比べてより多くの従業員のニーズに応えられる可能性が示唆された。
  4. 従業員のウェルビーイングを支援し開示する動きは日本企業の間でも増加しているが、金融面にフォーカスした支援は拡充の余地がある。企業のモチベーションをさらに高めるべく、公的主体がファイナンシャル・ウェルネス支援に積極的な企業を認定するような取り組みも、検討に値するのではないだろうか。企業と従業員、双方の観点から、ファイナンシャル・ウェルネス向上の工夫を重ねていくことが重要と言える。