西山 賢吾
- 2025年3月が本決算のRussell/Nomura Large Cap構成企業195社の有価証券報告書を対象に、任意記載事項である従業員サーベイに関する記述を調査した。前回(2024年)と比較すると、サーベイに言及する企業やサーベイ関連の目標値を公表する企業、役員報酬に従業員サーベイの結果を反映させている企業の割合が上昇した。しかし、全般的には記述量や記載内容に大きな変化はみられず、有価証券報告書での情報開示は小幅の改善に留まった。
- 各社の開示の中では、(1)企業価値向上プロセスにおける従業員サーベイの位置づけを図表を用い明確化、エンゲージメントスコアの実績値、目標値、調査結果、それらを受けた今後の課題について言及する味の素、(2)組織に対する社員のコミットメントを測定する独自指標を採用、その目標値を設定するとともに、サーベイ結果から浮き彫りになった課題をベースに今後の重点課題や取り組みを記載する出光興産、(3)調査で得られた従業員満足度を人的資本上の重要戦略とし、従業員満足度と業績との関係を図示するディスコを好事例として挙げることが出来る。
- 人的資本の情報に関しては、企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等を2026年3月期の有価証券報告書より開示することが検討される方向である。また法定開示情報と任意開示情報の位置づけや、企業評価の上で重要な情報の有価証券報告書への集約化を始めとした企業情報開示の在り方に関する議論も進められよう。少子高齢化が進んで良質な従業員の獲得に対する難易度の上昇が想定される中で、「人を活かす経営」を重視、実践して企業価値向上を図る「本気度」を見る上で、有価証券報告書での従業員サーベイに関する開示に一段の注目をしていきたい。