日本の個人投資家とESG投資
-関心は高まるがさらなる認知度向上への取り組みも必要-

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 我が国の個人投資家に対するESG投資に関するアンケート調査(2018年12月公表)の結果を見ると、企業のESGへの取り組みに対し、『関心がある』との回答割合が過半を超えたが、『関心はない』との回答も4割弱に上った。また、回答者の年齢別に見ると、概ね年齢の高い回答者の方が『関心がある』と回答する傾向にあるという結果となった。
  2. 株式投資におけるESG要素の考慮については、『投資収益率が大事ではあるがESG要素もある程度考慮する必要がある』との回答が約50%となり、前回調査(2017年10月公表)と比べても4%ポイント強上昇した。さらに、『よくわからない』と、『投資収益率よりESG要因を考慮する必要がある』の回答割合が低下する一方、『投資収益率が重要であり、ESG要素を考慮する必要はない』との回答割合は上昇した。投資リターンを重視しつつも、ESG要因もある程度考慮しながら株式投資を行う個人投資家の姿勢がうかがわれる。
  3. ESG関連金融商品への関心については、2018年12月調査で『関心はない』と回答した割合が2017年10月に比べ低下したが、なお40%を超えている。一方、関心のあるESG関連金融商品の中では、特に『コーポレートガバナンスに優れた企業に積極投資をする投資信託』や『環境に配慮した企業に積極投資を行う金融商品』が、世代を問わず回答割合が相対的に高かった。
  4. 欧米では個人投資家がESG投資に高い関心を持っているとのアンケート結果が見られるが、今回紹介したアンケート結果や、個人向け金融商品におけるサステナブル投資残高から見ると、我が国でのESG投資への関心は、緩やかに高まってきつつあるものの、欧米と比較するとまだ発展途上と考えられる。個人投資家のESG投資に対する関心を高める取り組みが今後さまざまな局面で行われることに期待したい。
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