ガバナンス改革の実効性向上を目指しフォローアップの議論再開
野村資本市場研究所 西山 賢吾、片寄 直紀
要約
- 我が国のコーポレートガバナンス改革の方向性を見る上で重要なスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第16回)が2018年11月27日、8か月ぶりに開催された。
- 第16回会合では、まず、事務局より、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの制定・改訂によって、企業の ROE(自己資本純利益率)や PBR(株価純資産倍率)は改善傾向にあり、政策保有株式の縮減や社外取締役の選任の進展等、成果が挙げられている旨の説明があった。課題としては、投資家が求める資本コストのレベルに達していないこと、政策保有株式の更なる縮減、監査の信頼性確保等が挙げられた。そして、スチュワードシップ・コードを受け入れた投資家の活動状況の可視化の方向性についても言及された。
- その後の自由討論では、メンバーからは多岐に渡る意見が出たが、コーポレートガバナンス改革に進捗が見られること、企業と投資家の対話の進展があることを評価する様子であった。一方で、内部監査のあり方や、社外取締役の選任プロセス、投資家の議決権行使の基準と企業との対話、ESG(環境・社会・企業統治)要因に関する開示の方法等、更に議論を深めるべき部分もあるという指摘も見受けられた。
- 2つのコードとも改訂されて日が浅いため、今後のフォローアップ会議では、2つのコードの実効性をさらに高めるための検討、議論が中心になると考えられる。一方、コーポレートガバナンス改革への取り組みにおける企業間格差が拡大しているという見方もあるため、格差を縮小するための取り組みについても議論が進められることを期待したい。