2019年株主総会における主要議案議決権行使のポイント

野村資本市場研究所 西山 賢吾

要約

  1. 2019 年の株主総会上程議案に対する、機関投資家を中心とした議決権行使基準の改定を検討するポイントとしてまず挙げられるのは、社外取締役の増員であろう。すでに大部分の機関投資家では複数の社外取締役の選任を求めているが、これを取締役総数の 3 分の 1 以上に引き上げるかどうかが、多くの機関投資家で検討されている。しかし、すでに改訂された機関投資家の基準を見ると、全ての企業に対してではなく、支配株主が存在する企業や、監査等委員会設置会社である企業に対し、3分の1以上の社外取締役を求めるところが比較的多くみられている。
  2. コーポレート・ガバナンスコードの改訂で縮減の方針や保有の合理性に関する情報開示が求められた政策保有株式に関し、企業に縮減を求めていく上で、機関投資家が今後保有水準に関する今後何らかの数値基準を設定することも考えられる。しかし、明確な設定理由を説明できる水準の設定が難しいことや、大部分の企業が政策保有株式の情報を開示するのは株主総会後の有価証券報告書であるため、総会開催時点で入手できる情報が前年度のものになってしまうことなどの問題があり、まだ進んでいるとはいいがたい。このため、政策保有株式に関しては、企業と投資家との対話のテーマの一つとして取り上げられることが中心になるであろう。
  3. 役員報酬に関しても投資家の関心が高いが、現在は「企業価値を高めることにつながる報酬制度が構築されているかどうか」が主要な関心である。よって、株主総会の上程議案で対応するよりも、企業との対話のテーマを通じ、投資家の考えを企業に伝えるとともに、企業に業績連動性の高い報酬制度の構築を求めていくことになろう。さらに、取締役会構成者の多様化という観点でジェンダーや国籍にも関心が高いが、こちらも、例えば女性役員の存在しない企業の取締役選任議案に反対するといった議決権行使で対応するよりも、企業との主要な対話のテーマとして取り上げられることが現状は主になるであろう。
  4. 機関投資家の議決権行使に関し、企業側からは「判断が杓子定規」との批判は依然として少なくない。もちろん、機関投資家議決権行使基準から「例外的」に異なる判断をする余地は非常に小さいであろう。それでも、「機関投資家は個別の事情を勘案せず、門前払いをしている」との心証を企業側に抱かせてしまうと、議決権行使以外のテーマで建設的な対話を行うことが難しくなる懸念もある。よって、企業の見解を聞いた上で、機関投資家側の考えを丁寧に説明し、理解を得るように努めることが肝要であろう。
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