カナダ年金制度投資委員会(CPPIB)によるグリーンボンド発行
-年金基金として初の取り組み-

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. カナダの公的年金積立金運用機関のカナダ年金制度投資委員会(Canada Pension Plan Investment Board、CPPIB)は、子会社であるCPPIBキャピタルを通じて、2018年6月にグリーンボンドの発行を開始した。年金基金は、しばしばグリーンボンドに積極的に投資しており、グリーンボンド市場の主要投資家層となっているが、年金基金によるグリーンボンドの発行は2019年4月末時点で、CPPIB 以外に見当たらず、興味深い事例と言える。
  2. CPPIBは近年、世界的な低炭素経済への移行に向けた対応等に鑑み、再生可能エネルギー関連投資を行ってきたが、再生可能エネルギーやグリーンビルディング等への投資を拡大すべく、子会社を通じたグリーンボンドによる調達に踏み切った。CPPIBキャピタルは、2018年6月にカナダドル建て、2019年1月にユーロ建てでグリーンボンドを発行している。
  3. CPPIBキャピタルによるグリーンボンド発行は、CPPIBの低炭素経済移行への対応に向けたコミットメントを、CPPの加入者、受給者、グリーンボンドの投資家といったCPPIB のステークホルダーに PR する一助になったと考えられる。また、これまで ESG投資家としての知見を蓄積してきたCPPIBが、子会社を通じたグリーンボンドの発行により、発行体としての知見も得ることとなったと言える。
  4. 将来的に、他の年金基金がグリーンボンドの発行という手法を活用するか否かは、CPPIB の取り組みの有効性がカギとなろう。具体的には、(1)資金調達を上回る利回りを充当プロジェクトから得られるか、(2)資金調達によりポートフォリオの規模を拡大したことを通じて、どの程度追加の環境的便益(インパクト)の創出に寄与できるか、(3)グリーンボンドによる資金調達及び持続可能なプロジェクトへの投資に関して、レポーティング等を通じて CPPIB のステークホルダーに説明責任を果たすとともに、信認を確保し続けられるか、といった点である。
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