TCFD現状報告レポートにみる日本の気候関連財務情報開示への取り組み

野村資本市場研究所 江夏 あかね

要約

  1. 金融安定理事会(FSB)は2019年6月5日、下部組織である気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2回目となる提言の進捗状況を示す現状報告レポートを公表したことを明らかにした。
  2. 同レポートでは、TCFDを支持する各種イニシアチブとして、世界各国の事例が取り上げられた。加えて、賛同表明数が足元で785の組織(時価総額合計で約9.3兆ドル)に上っていること等が紹介された。賛同表明組織は49ヵ国に渡っているが、その中で日本の賛同表明組織数が最も多かった。
  3. TCFDによる2回目の現状報告レポートにおいては、2017年6月の提言から2年ほどを経て、開示の質の向上の余地はあるものの、世界の企業等に着実に浸透しつつあることを浮き彫りにする内容となった。背景としては、一部の国・地域等において規制化に向けた動きがあることも挙げられる。日本の場合は2019年6月末現在、TCFDの提言に関する規制化に向けた動きは特になく、提言の浸透を推進するための各省庁における取り組みやTCFDコンソーシアムといったイニシアチブが中心となっているとみられる。
  4. 金融市場においては、TCFD提言がさらに浸透すれば、企業や投資家にとって新たな資金調達・投資機会が生まれることもあり得るほか、気候関連財務情報を活用した金融商品が開発される可能性もあると考えられる。その意味で、今後も企業・投資家ともにTCFD関連の動きを注視することが重要と言える。
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