ASEAN域内の機関投資家によるESG投資の取り組み
-マレーシアのKWAPとシンガポールのテマセク-

野村資本市場研究所 富永 健司

要約

  1. 投資判断を行う際に環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の要素を考慮するESG投資に機関投資家がコミットする動きが広がっている。こうした動きは、欧州諸国などが牽引する形になっているが、昨今、ASEAN(東南アジア諸国連合)域内において、マレーシア、シンガポールといった国の大手機関投資家が、ESG投資への取り組みを強化する動きが出始めている。
  2. マレーシアにおいては、公務員年金の管理運用を行う退職基金公社(KWAP)が、投資プロセスや組織活動でESG要素を考慮する取り組みを進めている。KWAPは、株式投資の際に独自に開発した株式及び発行体に対するESGレーティングを活用している他、債券等に関する信用評価及び投資プロセスにおいてESG要素の考慮を行っている。
  3. シンガポールの政府系ファンドであるテマセク・ホールディングス(テマセク)は、「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現を目指すにあたり、活気のある経済、美しい社会、清潔な地球という独自のキーワードに基づきSDGsの目標を分類し、目標達成を志向している。2019年5月、社会貢献に関する傘下の子会社であるテマセク・トラストを通じて、アジアにおけるインパクト投資に特化したプライベートエクイティ(PE)ファンドである、ABCワールド・アジアを組成することを明らかにした。
  4. 本稿で取り上げたKWAPとテマセクの事例が示すように、ASEAN域内にも、異なる特徴を有するESG投資家が登場していることが見て取れる。一般に、ESG投資の定着と普及にあたっては、投資家が、ESG要素が運用資産のリスク・リターンに与える影響を理解・納得すること、投資の社会・環境に対するインパクトを把握することなどが求められてくる。ASEAN諸国においては、経済成長と環境保全の両立が重要性を増す中で、さまざまな投資家が、どのような形でESGの要素を投資活動に取り入れていくのか、今後の進展が注目されよう。
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