2030年に向けた戦略

2031年3月期のありたい姿

インベストメント・マネジメント部門では、高品質で付加価値の高いサービスを提供し、国内外で認知度を高めることを目指しています。そのために、「国内の機会を捉えるソリューション」、「グローバルに通用する価値創造」、「世界と共に挑む新たな成長」の3つのテーマで運用資産残高の拡大と高付加価値分野への注力を進めてきました。
 

2025年3月期の運用資産残高はKPI目標(89兆円)を上回り、事業収益は2021年4月の部門設立以降で最高となりました。インハウスのアクティブ運用や富裕層向けのプライベート・アセット運用など高付加価値分野に資金が流入し、プロダクトミックスが変化した結果、運用報酬率が改善したと考えています。
 

2031年3月期に向けて、パブリック、オルタナティブ、買収予定のマッコーリー・グループの事業も含め、運用資産残高を150兆円超、税前利益で1,000億円規模を目指します。今後の注力ドライバーは、「国内の機会を捉える運用ソリューションの提供」、「プライベート、リアルアセット領域の拡大」、「マッコーリー・グループの米国資産運用会社の全株式取得を通じた、グローバル・プラットフォームの確立」の3点です。
 

日本経済がデフレから脱却するなか、購買力防衛の観点から、株式や投資信託の運用ニーズが高まりつつあります。日本企業の収益力の構造的改善にともない、日本株の評価が見直されたことも投資家の行動変化を促しています。政府が掲げる「資産運用立国実現プラン」のもと、資産運用業界は飛躍的な拡大期を迎えていると見ています。
 

また、世界的なインフレ、金利環境や金融規制を踏まえ、投資家のインフレヘッジやリスク分散を目的とした安定的な収益確保へのニーズが高まっています。それにともなって分散効果やリターン向上余地の大きいオルタナティブ投資が注目されており、特にオルタナティブ投資比率が低い日本では、今後大きな成長が見込まれます。ルール整備により、個人富裕層のプライベート・アセットへのアクセスも広がり、裾野が拡大しています。不動産やインフラ、森林などのリアルアセットもインフレ耐性が高く、安定収益源として注目されています。
 

さらに、マッコーリー・グループの事業買収を契機に、米国でのプレゼンスを拡大させ、部門のグローバル化および規模拡大を実現、グローバルフランチャイズとしての位置づけを確立します。

運用資産残高、税引前当期純利益グラフ

※1 その他にはアメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益、その他損益等を含む
※2 2025年4月に発表した、マッコーリー・グループの米国資産運用会社の全株式取得による税引前当期純利益目標も含む
※3 2024年3月期~2031年3月期の年平均成長率
※4 買収予定先による上乗せ以外は2024年5月インベスター・デーで公表した数値を使用

国内の機会を捉える運用ソリューションの提供

資産形成・リタイアメント層に向けたソリューション提供
NISA/確定拠出年金(DC)

リタイアメント層の資産運用と資産活用を両立するニーズに向けたソリューションを提供します。DCに関するグループ内の連携を強化し、ライフサイクルに応じた資産形成を後押しします。

富裕層・法人に向けたソリューション提供

富裕層・法人のお客様のニーズを踏まえ、伝統的資産からプライベート資産まで幅広いアセットクラスを組み合わせたオーダーメイドのソリューションを提供します。ウェルス・マネジメント部門が提供する投資一任や助言サービスでは、「資産配分の策定」と「ファンド選定」を行うCIO※1機能を強化します。20年超にわたるオルタナティブ資産の評価・運用経験を活かしつつ、野村オルタナティブコネクト(NAC)※2を通じて、「プライベート投資の民主化」をさらに促進します。

多様な投資家層に向けたETFによる利便性提供

リアルタイムで時価での売買が可能なETFは、投資家の保有残高が年々増加傾向にあり、特に日本では、資産運用の手段として大きな成長余地があると考えています。幅広い運用ニーズに応える商品ラインアップの拡充とマーケティングを強化します。

プライベート、リアルアセット領域の拡大

プライベート・エクイティ、デット

国内では、バイアウト投資、サーチファンド(事業承継バイアウト投資)、グロース投資、メザニン投資に取り組んでいます。今後もグループ内連携を図り、後続ファンドの立ち上げを行うことで、さらなるスケール化を図ります。

米国でのプライベート・クレジット投資の拡大

米国において、プライベート・クレジット領域の運用体制を構築、拡大しています。不動産などを担保にした資金の貸し出しや、企業などに直接資金を貸す仕組みを使ったファンドを運用しており、付加価値の高い、リスクが分散された投資機会を提供しています。

既存リアルアセットの拡充

リアルアセット領域では従来の航空機リースに加え、不動産や森林アセット分野に参入しています。人材や顧客ネットワークといったグループの総合力をさらに活用することで、プロダクトを拡充していきます。

新規リアルアセットへの展開

世界的視野で、社会課題の解決につながる投資の好循環を促す高品質な投資商品を開発していきます。足元では、農地、再生可能エネルギー、蓄電池等への新規展開を進めています。

マッコーリー・グループの米国資産運用会社の全株式取得を通じた、グローバル・プラットフォームの確立

2025年4月、マッコーリー・グループの米国資産運用会社の全株式を取得することで合意しました。本買収により、インベストメント・マネジメント部門の運用資産残高に占める海外比率は16%※3から35%※4に、収益の海外比率は34%から60%に増加し、グローバルな事業展開力と顧客基盤が大幅に強化されます。本買収完了後、まず米国でのプレゼンス向上に取り組みます。対象事業※5は米国の個人投資家向けディストリビューターの上位10社のうち9社と取引関係があり、この強みを活かして顧客基盤の維持・拡大を進めていきます。並行して、成長の加速、新たな運用能力の構築を図ります。対象事業のプラットフォーム等を通じて、既存ビジネスのさらなる成長を促進し、例えば野村グループが運用するプライベート・クレジット・ファンドを、対象事業の販売プラットフォーム経由でお客様に提供する予定です。加えて、本買収を契機に、マッコーリー・グループのオルタナティブ商品について、野村グループが米国富裕層向けの販売パートナーとなるといった協業を推進します。最終的には、双方の強みをアジアや欧州含む世界の顧客にアピールし、顧客基盤と運用能力の拡大を目指します。

※1 チーフ・インベストメント・オフィス。「公的年金、企業年金などの機関投資家向けの資産運用サービス機能を個人投資家等に拡げる」をコンセプトとした野村グループの高付加価値アドバイザリー・モデル
※2 世界のオルタナティブ投資プロダクトへのアクセスを提供するサービス。世界の有力なオルタナティブ運用会社(NACパートナー)が提供するファンドにワンストッ
プで投資する機会を提供することで、さまざまなアセットクラス、地域、投資戦略、リスク選好度や投資形態に関するアドバイスを受けることができ、多様なポートフォリオを構築可能になる
※3 2024年12月末現在
※4 買収対象事業は2024年9月末現在の数値、対象事業の収益は未監査の管理報酬(手数料控除後)を年換算した数値を使用。野村は2024年12月末の数値を使用
※5 伝統的資産のアクティブ運用を中心とするアセットマネジメント事業