野村證券金融工学研究センター 大庭 昭彦
- はじめに
- 最近の市場心理動向
- 投資家とリスク
- リスク資産保有を決めるもの
- 投資アドバイザーの社会的価値
- 社交性と株式投資
- 新しいリスク資産管理
- 進展する資産管理理論とVaR
- リーマンショックとVaRの限界
- VaRの限界とシナリオ分析
- ストレスシナリオの例
- その他の大きな経済ショック
- シナリオ分析の実際
- 最悪を考えることの意味
- おわりに
- オプションの価格などから導かれる「投資家の不安度」を示す日経平均ボラティリティインデックス(VI)の最近の動きを見ると、昨年半ばにいったん高い数値になった後、この一年はおおよそ下落傾向で2014年6月時点では市場は不安を感じていないと言って良い水準となっている。野村證券金融工学研究センターの「VIと株式市場の関係のモデル」によれば、この水準であれば、市場の流動性を高めるためのさまざまな施策は市場にポジティブに働くだろう。
- 投資家がリスク資産市場に参加するかどうかは、従来いわれていた「リスク回避度」よりも、他人を信頼する気持ち(トラスト)が重要な意味を持っているという新しい知見がある。政府を中心とした働きかけで、市場への信頼を維持することは重要である。
- リスク資産を保有している投資家がどのように行動すれば良いかについては、リーマンショック後も、ファイナンス理論に基づく手法が拡張して使われている。シナリオ分析を核とした拡張は、ある意味で人間の心理的な問題点を考慮したものになっている。
- 今後の日本の株式市場では、投資家の市場への不安が小さい水準のままで(市場に対して信頼が保たれているままで)リスク資産への投資が拡大していくこと、およびそこでのリスク管理が合理的な方法で行われていくことが期待される。