野村證券金融経済研究所投資調査部 西山 賢吾
- はじめに
 - コーポレート・ガバナンス、ディスクロージャー改革と説明責任
	
- 「独立役員」義務化と役員選任
 - 株式保有状況の開示とその対応
 - 企業の実状が重視される買収防衛策
 - 役員報酬関連はプロセス重視に
 - 資本増強と発行可能株式総数拡大
 - 株主提案は投資家の納得度合いで評価
 - 相互理解に資する議決権行使結果開示
 
 
- 親子上場と説明責任
	
- 親子上場禁止の検討と市場への影響
 - 親子上場禁止を巡る論点
 - 親子上場の現状と今後の展望
 
 
- 資金調達と説明責任
	
- 資金調達手法としてライツ・イシューが求められるようになった背景
 - ライツ・イシューとは
 - ライツ・イシュー普及を目指したルール改正
 - ライツ・イシューと株価
 - ライツ・イシューの課題
 - 投資家の評価軸は「エクイティ・ストーリー」
 
 
- 金庫株と説明責任
	
- 金庫株の取り扱いへ関心が高まる
 - 「消却」が求められるわが国企業
 - 説明の充実による相互理解が鍵
 
 
- おわりに
 
- 金融庁や東京証券取引所等より出されたコーポレート・ガバナンス、ディスクロージャー改革の中では、「独立役員設置の義務化」と「株式保有状況の開示拡充」が特に注目される。いずれも、企業の投資家に対する説明を重視している。
 - 親子上場の禁止法制度化が話題に上ったが、親子上場を禁止している証券取引所はない。親子上場数は既に減少傾向にあり、法制度化とは無関係に、コーポレート・ガバナンス改革の進行が自発的な解消をさらに促すであろう。
 - 「ライツ・イシュー」は、既存株主への新株引き受けの選択権付与などの配慮がなされているが、投資家の評価軸は企業価値向上戦略、すなわち「工クイティ・ストーリー」にあり、これは他の資金調達手法と異なるものではない。
 - 金庫株は、その保有目的は自由であり、会計上も自己株式取得時点で消却と同様に扱われるが、投資家からは主に消却が求められる。こうした企業と投資家との考え方の違いを埋めるには、金庫株保有理由のより明確な説明が必要である。
 - 今回のコーポレート・ガバナンス、ディスクロージャー改革を貫くキーワードは『説明責任』である。わが国企業と投資家の意思疎通は年々深化しているが、一連の改革を通じ、企業、投資家双方の説明責任がさらに明確になることでわが国企業のコーポレート・ガバナンスに対する信頼が高まり、ひいては株式市場を始めとしたわが国資本市場の評価をも高めることにつながると考える。