野村證券経済調査部 西山 賢吾
- はじめに
 - 我が国の株式保有構造の変遷
	
- 「持ち合い」の定義
 - 第1期持ち合い解消までの変遷
 - 持ち合いの「復活」
 
 
- 第2期持ち合い解消を進める諸要因
	
- 「第2期」持ち合い解消の始まり
 - 今後数年解消の継続が見込まれる
 - 銀行の自己資本規制対応
 - ソルベンシーマージン規制と保険会社
 - 包括利益の公表
 - 保有株式の開示拡充
 - 持ち合い解消はむしろメリットが多い
 - 株式需給に与える影響は総じて小さい
 
 
- 持ち合い解消と外国人、個人投資家
	
- 外国人の動向が変化する中、注目集める「OD05」
 - 個人投資家と高まる日本版ISAへの期待
 
 
- おわりに
 
- 我が国の企業が株式の保有圧縮を続けている。野村證券で算出した2011年度の持ち合い比率、広義持ち合い比率はともに過去最低水準を更新した。1990年代後半から2000年代前半にかけて進んだ「第1期」持ち合い解消に続く「第2期」の持ち合い解消が進み始めたと考えられる。
 - 第2期の持ち合い解消の誘因は、主に金融機関の規制対応や保有株式の企業財務に与える影響などの軽減と見られるため、保有株式の圧縮の動きは当面変わらないと考えられる。そのため、第2期持ち合い解消は今後数年間継続するであろう。
 - 第2期持ち合い解消において放出される株式を吸収する担い手として主に期待されるのは、外国人と個人投資家と考えられる。外国人は、日本株に対する投資意欲が従来に比べ減退しているように見えるが、その中で存在感を高めているカストディ勘定である「OD05」が注目される。
 - 個人投資家に関しては、2014年より導入が予定されている日本版ISA(少額投資非課税制度)の導入により、中長期の観点から投資を行う個人投資家が増えることや、それにより日本株への資金流入を促進することにつながることが期待される。
 - 持ち合い解消が株式市場にネガティブなインパク卜を与えることへの懸念は根強い。しかし、これまでコーポレート・ガバナンスの観点から問題視されることの少なくなかった持ち合いの解消が進めば、株式を保有させるためには、企業が自分たちの考えを投資家に理解してもらうための対話や説明が従来以上に必要になる。これは、我が国企業や株式市場の信認や、投資魅力を高めることにつながるため、むしろ持ち合いの解消は我が国の株式市場にとりメリッ卜の方が多いと考える。