野村證券エクイティ・リサーチ部 野村 嘉浩
- はじめに
 - IFRS適用を取り巻くわが国の環境
	
- 直近のIFRS適用状況
 - IFRS適用レポート
 - 会計基準の選択について
 - 修正国際基準(JMIS)
 - IFRS移行を意識した取組み
 
 
- IFRSの日本基準との差異分析
	
- 日本基準改正の変遷
 - IFRSと日米基準との重要な差異
 - 企業決算数値の事例
 - 営業利益の表示
 
 
- 今後の日本基準開発
	
- 税効果会計適用指針
 - 収益認識に関する会計基準
 - 日本基準その後
 
 
- おわりに
 
- わが国における国際会計基準(IFRS)適用企業数は、適用予定公表企業を含め、88社を数え、その時価総額ウェイトは全上場企業の20%を超える水準にまで高まってきた。適用業種の幅も広がりつつあり、今やIFRS適用は、わが国のすべての上場企業にとって重要な経営課題となってきた。金融庁による「IFRS適用レポート」の公表や、東京証券取引所による「会計基準の選択に関する基本的な考え方」の記載要請も、こうした流れを反映している。
 - 個別の会計基準に目を転ずると、IFRSと日本基準との差異は、今世紀に入ってからの改正の変遷を経て、かなり解消されてきた。しかし、のれん、開発費、収益認識、リースなど、いくつかの差異が残されており、IFRS適用企業にとって、損益や純資産の変化要因となっている。財務諸表利用者は、ある企業がIFRSを適用する際に、経営成績や財政状態に与える影響について留意する必要がある。
 - 日本基準の改正に関しては、税効果会計と収益認識の2つのプロジェクトが進んでいる。前者は、2015年内の最終化を目標に、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針を開発する予定であり、後者は、IFRSの新基準適用時期である2018年を見据えて、慎重に議論を進める予定である。特に後者は、金融商品取引法適用企業以外の企業への対応に関する議論にも注目していく必要がある。
 - 直近、2年程度をかけて開発を進めてきた修正国際基準(JMIS)は、2015年6月中に最終基準となる。2012年までに確定しているIFRSの「エンドースメント手続き」が終了した後は、速やかに、2013年以降に開発されたIFRSの「エンドースメント手続き」、及び、JMISの適用や解釈に関するガイダンスや教育文書の作成も進めていく必要がある。JMISをめぐる議論にも、引続き、注目していきたい。