「100年のまちづくり」を掲げ、東日本大震災からの復旧・復興、子育て支援、移住・定住の促進、宇宙産業の創出など幅広い施策を推進する福島県南相馬市と、2019年に高速道路会社として初めてソーシャルボンドを発行して以来、サステナブル・ファイナンスを推進する東日本高速道路により、震災からの復興、未来へ向けた取り組み、SDGsへの貢献の取り組み等をテーマとした対談が行われました。
参加者
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福島県南相馬市 |
東日本高速道路株式会社 |
野村證券株式会社 |
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市長 門馬和夫氏 |
東北支社 総合企画部長 杉村 元氏 |
公共法人部長 伊藤 晶 |
※本対談は2026年6月8日に南相馬市役所にて行われました。参加者の所属・役職等は対談当時のものです。
伊藤:
南相馬市様が東日本高速道路様の発行するソーシャルボンドへの投資を表明されたことを契機として、債券を発行する側、投資する側のそれぞれの考えや思いを伺い、資本市場の活性化や地域の活性化に繋げたいと考えています。
門馬市長:
金利環境が変化する中で、本市としても資金運用のあり方を見直し、より有効な方法を検討したいという思いから、運用規程の見直しを行いました。その際、安全性を確保しながら、いかに適切な運用ができるかという観点から、社債なども含めて幅広く検討を進めた結果、東日本高速道路ソーシャルボンドを購入することにしました。東日本高速道路様には、これまでも南相馬鹿島サービスエリアをはじめ、本市のさまざまな事業において大変お世話になっています。日頃から関係の深い東日本高速道路様の社債を購入することで、本市にとって資金運用上のメリットがあるだけでなく、それが東日本高速道路様にとってもプラスになるのであれば、非常に嬉しく思います。
杉村氏:
南相馬市様をはじめ、当社の事業エリアに所在する自治体の皆さまに当社の社債をご購入いただいていることは、私たちが事業を進める上で大きな励みとなっています。地域の皆さまと一体となって事業を進めているという実感は、当社にとって非常に心強いものです。今後も事業エリアの自治体の皆さまとこのような形で連携を深めていければ、大変光栄です。
伊藤:
金利が上昇局面に入り、銀行預金の代替として債券への投資を検討・実行される自治体が増えています。加えて、ESG債の普及に伴い、お金の地産地消ともいえる考え方が広がっているように思います。投資するのであれば、地域に何らかの形で還元される、あるいは地域とのつながりや相乗効果を説明できる発行体を選びたい、という動きです。東日本高速道路様のように、自分たちが生活する地域の高速道路を管理・運営し、地域のインフラを支える発行体への投資であれば、単なる資金運用にとどまらず、地域との関係性や意義を語ることもできます。こうした地域のお金を地域に関わる事業へ循環させるという流れは、自治体にとっても、債券発行体にとっても、非常に前向きな循環に繋がるものだと考えています。当社としても、このような取り組みの意義をしっかりと発信し、投資家と発行体との輪を今後もさらに広げていきたいと考えています。
門馬市長:
自治体の資金運用においては、損失を出すことは避けなければならないため、満期まで保有することを前提とした運用が一般的だと思います。一方で、本市も投資家としての立場だけでなく、市債の発行体としての立場もあるので、本市の事業に対して地元の皆さまに投資していただき、利息を受け取っていただくというのが理想的です。高速道路は地域を支える非常に重要なインフラです。そうした事業に関わる形で資金を活用できるのは大変ありがたいことであり、地域に関連する事業を行う企業が発行する社債へ投資を行う取り組みは、非常に意義があると思っています。
参加者
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福島県南相馬市 |
東日本高速道路株式会社 |
野村證券株式会社 |
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副市長 常木孝浩氏 |
総務・経理本部 経理財務部 財務課 課長 外門直之氏 |
公共法人部長 伊藤 晶 |
伊藤:
南相馬市様は、東日本大震災からの復興をはじめ、地域産業の再生、人口減少への対応、防災・減災への取り組みなど、さまざまな課題に向き合いながら歩みを進めてこられました。また、東日本高速道路様の事業である広域交通インフラは、人やモノの移動を支えるだけでなく、地域の活力を生み出し、安心・安全な暮らしを支える重要な基盤でもあります。本対談では、地域を支える交通ネットワークの役割や、ESG投資への取り組みなど、幅広くお話を伺います。
稲村氏:
現在の南相馬市は、 2006年1月1日に旧小高町、鹿島町、原町市の一市二町が合併して誕生しました。人口は約5万4千人です(2026年5月1日現在)。福島県の浜通り北部の太平洋側に位置し、豊かな自然と都市機能が調和した、地方都市となっています。

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- (出所)南相馬市『南相馬市の現況と発展に向けた取組』
南相馬市の魅力の一つに、沿岸にある北泉海浜総合公園があり、海水浴やキャンプ、花火大会で賑わうとともに、サーフィンの全国大会なども開催され、多くのサーファーの方々にも、年間を通してお越しいただいています。また、南相馬市を代表する伝統行事として、1024年もの長きにわたり大切に受け継がれてきた「相馬野馬追」があります。毎年、東北の祭りの先陣を切って開催され、甲冑を身にまとった騎馬武者たちの勇壮な姿を一目見ようと、国内はもとより、海外からの観光客など、多くの方々が訪れます。2026年5月24日に行われた神旗争奪戦では、初めて会場への入場制限が設けられるほど多くの来場者で賑わいました。

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- (出所)南相馬市『南相馬市の現況と発展に向けた取組』
伊藤:
2026年は東日本大震災から15年が経過する節目の年となります。東日本大震災からの復興の取り組みについて教えてください。
稲村氏:
南相馬市は、2011年3月11日の東日本大震災で、震度6弱の揺れと12メートルを超える巨大津波に見舞われました。沿岸部を中心に壊滅的な被害を受け、震災による直接の死者は600人を超えました。さらに、福島第一原子力発電所の事故により避難指示が出され、市内は3つの区域に分断されることになりました。原発から20キロ圏内に位置する小高区、原町区の一部では強制避難が行われ、一時は市民の約8割が市外へ避難するなど、非常に深刻な状況に置かれました。

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- 南相馬市 稲村氏
さらに、福島第一原子力発電所の事故により避難指示が出され、市内は3つの区域に分断されることになりました。原発から20キロ圏内に位置する小高区、原町区の一部では強制避難が行われ、一時は市民の約8割が市外へ避難するなど、非常に深刻な状況に置かれました。
現在、震災直後に損壊した道路や橋梁、上下水道、学校などのインフラ復旧は完了し、市民の皆さんの帰還も落ち着いていますが、小高区ではいまだ帰還が進んでいない状況にあります。また、避難の影響により生産年齢人口が約1万5,000人減少しており、現在も震災前の水準には回復していません。このため、高齢化率は2026年4月末現在で38.6%と、福島県平均を上回る状況が続いています。このように、南相馬市には今なおさまざまな課題がありますが、現在は「第3次総合計画」に基づいたまちづくりが進んでいます。「つなぐ、よりそう、いどむ」という姿勢を大切にしながら、7つの政策の柱と17の基本施策を定め、復興の先を見据えた地域づくりに取り組んでいるところです。

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- 津波被害、警戒区域(2011年4月21日)
(出所)南相馬市『南相馬市の現況と発展に向けた取組』
伊藤:
南相馬市では将来に向けて、どのような地域振興に取り組まれているのでしょうか。
藤原氏:
令和8年度は、南相馬市にとって大きな節目の年になります。市の誕生から20年、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故から15年、さらに、原発事故に伴う避難指示区域の一部解除から10年を迎える年です。そうした節目にあたる令和8年度予算は、南相馬市第三次総合計画の基本構想に掲げるまちづくりの基本目標である「100年のまちづくり~家族や友人とともに暮らすまち~」の実現に向けて編成しました。市民の皆さんが安心して、心豊かに、楽しく暮らすことができ、ふるさとに自信と誇りを持てるまちを目指して、「暮らしやすいまちづくり」を進めていくための予算です。同時に、創造的復興の実現に向けた歩みを、より一層加速させる取り組みを形にしていくものでもあります。
市では、まちづくりに関わる7つの重点分野を政策の柱として掲げ、幅広い分野で施策を進めています。令和8年度予算の規模は490億円で、そのうち東日本大震災に関連する震災関連事業が108億円、震災関連以外の取り組みが382億円となっています。
特に力を入れているのが、人口減少への対応です。南相馬市では「こども・子育て 本気で応援」という方針のもと、子育て支援に取り組んでいます。東日本大震災により人口が大きく減少した地域もあるため、子育て世代に選ばれるまちづくりは非常に重要です。具体的には、医療費、保育料、給食費の無償化を進めており、令和8年度からは修学旅行にかかる費用についても補助を行い、実質的な無償化を開始します。子育てにかかる経済的負担をできる限り軽減し、安心して子どもを育てられる環境を整えていきたいと考えています。
一方で、子育て世代だけでなく、あらゆる世代が安心して暮らせるまちづくりも大切です。認知症対策や生活習慣病対策など、健康づくりや福祉の分野にも力を入れ、年齢を重ねても「ここで安心して暮らせる」と感じていただけるよう、さまざまな取り組みを進めています。
また、令和8年度から令和12年度までの期間は、「100年のまちづくり」に向けた計画期間の最終段階にあたります。令和12年度までに、どのような施設や環境を整え、どのようなまちの姿を実現していくのかを、市民の皆さんにも具体的にイメージしていただけるよう取り組みを進めているところです。
人口減少対策の面では、「南相馬に住んでみたい」、「ここで働いてみたい」、「このまちで起業してみたい」と思っていただけるような環境づくりにも力を入れています。移住・定住の促進、雇用の創出、起業支援などを通じて、若い世代や子育て世代、さらにはシニア世代にも選ばれるまちを目指しています。
実際に、こうした取り組みは少しずつ成果として表れ始めています。2026年2月に発表された「住みたい田舎ベストランキング」では、人口規模別の子育て世代部門で全国1位、若者世代・単身者部門で全国2位、シニア世代部門で全国3位という評価をいただきました。こうした評価は、市として進めてきた施策が一定の形になり、外からも「選ばれるまち」として認識されつつあることの表れだと思っています。
今後も、復興の歩みを止めることなく、市民の皆さんが誇りを持って暮らせるまち、そして新たに移り住む方々にも魅力を感じていただけるまちを目指して、取り組みを進めていきます。

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- (出所)『令和8年度 南相馬市当初予算の概要』
常木副市長:
震災・原発事故による人口減少は、南相馬市にとって最大の課題であり、その課題を解決するには、復興を着実に進めていくことが大前提となります。だからこそ、子育て支援にも力を入れていますし、産業づくり、教育の充実、さらには東日本高速道路様と連携した拠点づくりにも取り組んでいます。
地方創生や創造的復興に必要な要素として、「寛容性」、「遊び」、「希望」などが挙げられますが、南相馬市には「寛容性」や「遊び」といった土台となる要素が、比較的そろっていると感じています。震災後、私たちは多くの方々から支援を受けてきましたし、新しいことに挑戦しなければ、町がなくなってしまうという思いも強く持っています。そのため、新しいものや異なるものを受け入れる土壌があるのだと思います。また、移住、まちづくり、商業など、さまざまな分野で挑戦を続けるキーパーソンがいます。相馬野馬追のように、外から多くの人が訪れ、地域に交流が生まれる文化的基盤もあります。こうしたベースの上に、いかに「希望」を重ねていくか。そこに力を注いでいます。
子育て支援に加え、移住・定住施策にも取り組んできました。平成31年度には90人ほどだった移住者数が、昨年度は646人まで増えています。約7倍です。福島県全体の移住者が約3,800人ですから、県内に移住する方の6〜7人に1人が南相馬市を選んでいる計算になります。教育面では、国際バカロレアやプログラミング教育の考え方を公教育の中に取り入れようと、教育委員会と連携して進めています。産業面では、恐竜化石などの資源にも注目しています。南相馬市にはジュラ紀の地層が露出している場所があり、足跡化石や植物化石など、世界的にも重要な発見につながる可能性がある発掘・活用にも取り組んでいます。
伊藤:
南相馬市様は、宇宙の分野においても先進的な取り組みを進められていると伺っています。宇宙産業の創出に向けた取り組みについてもご紹介いただけますでしょうか。
常木副市長:
国内の宇宙スタートアップはおよそ100社といわれていますが、そのうち8社が南相馬市に立地しています。ロケット関連の地元発注も始まっており、かなり具体的な動きが出てきています。
宇宙分野では、ロケット関連と人工衛星関連の両軸で取り組みを進めています。今後5年ほどの間には、輸送系では大規模な燃焼実験ができる施設の整備を目指したいと考え、衛星系では研究開発拠点の形成を進めていきたいと思っています。復興関連の国の方針の中でも、実証拠点の整備に取り組むことが位置づけられており、閣議決定文書にも盛り込んでいただいています。
この取り組みは、南相馬市だけにとどめるものではありません。東北全体に広げていこうと、さまざまな地域や機関との仲間づくりを進めており、秋田県能代市や、宮城県角田市、JAXAなどとも連携しています。JAXA角田宇宙センターには職員を派遣し、東北に宇宙産業をしっかり根づかせていこうと取り組んでいます。国の成長戦略においても、航空宇宙は重要分野の一つに位置づけられています。東北経済産業局がまとめた「東北地域戦略産業クラスター計画(素案)」にも、南相馬市、東北経済産業局、JAXA、角田、能代、さらにはトヨタ系サプライヤーなどを含めた連携の方向性が盛り込まれました。南相馬市から始まった動きが、東北全体の取り組みへと広がりつつあります。

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- (出所)経済産業省 東北経済産業局『東北地域における宇宙関連産業振興に係る広域連携に向けた検討について』(2025年9月)
もう一つ、大きな取り組みが、南相馬鹿島サービスエリアです。もともとは年間52万人程度の利用を想定して整備された施設ですが、直近では年間約150万人に利用されています。常磐自動車道の4車線化が進めば、利用者数はさらに増加すると見込んでいます。売上についても、現在サービスエリア全体で約10億円規模ですが、将来的には3倍程度まで伸ばせる可能性があると考えています。
私たちが目指しているのは、単なるサービスエリアの拡張ではありません。「まちをつくるサービスエリア」です。従来のサービスエリアは、休憩、食事、情報提供が主な機能でした。そこに、まちづくりの機能を加えたいと考えています。市が連結許可を受けて運営しているユニークな場所だからこそ、地域全体の価値向上に活用していきたいのです。
人口減少という厳しい現実はありますが、危機感を原動力に、子育て、教育、産業、文化、まちづくりを一体的に進めていく。南相馬市としては、そうした取り組みを通じて、次の世代に希望をつないでいきたいと考えています。

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- 常磐自動車道 南相馬鹿島サービスエリア、南相馬市が管理運営する「セデッテかしま」
(出所)セデッテかしまホームページ
伊藤:
震災からの復興には、東日本高速道路様が事業とする広域交通インフラの関わりが大きいと思います。東日本高速道路様の事業内容についてお聞かせください。
外門氏:
東日本高速道路(NEXCO東日本)は、北海道から東北・関東・信越地域までの高速道路を管理運営する会社です。南相馬市様が誕生20年とのことですが、当社も2005年に日本道路公団から民営化され、昨年20周年を迎えました。現在約4,000kmの路線網を管理・運営しており、高速道路の建設・管理、サービスエリアの運営等を通じて地域と経済を支えています。2026年からは新たな5カ年の中期経営計画のもと、事業を行っています。今回の中期経営計画に限らず、民営化以降は24時間安全・安心、快適便利な高速道路空間をご提供することを目標にしています。

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- 東北地域の事業エリア拡大図(2020年9月1日)
(出所)東日本高速道路ホームページ
安全・安心に関しては、耐震補強や4車線化を着実に進め、首都直下地震等の大きな地震に備えていくことや、逆走対策、暫定2車線区間での対策を進め、重大事故を防ぐなど、安全・安心の質をより高めることを目標にしています。
快適・便利に関しては、ハード・ソフト両面から渋滞対策を進めていくとともに、新設路線の供用に加え、休憩施設の様々なサービス向上を行い、より快適・便利なサービスを提供しています。さらに、自動運転の実証実験等を通じて、次世代高速道路(moVision)の実装を目指すことや、AI、ロボティクスなどの進化する先端技術を取り入れ、新たなサービス提供や社会課題解決への貢献、高速道路管理の効率化・省人化やコスト削減を進めていくことが重要なポイントであると考えています。

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- 4車線化事業(常磐道)
(出所)東日本高速道路ホームページ
福島県内には、南北に東北自動車道及び常磐自動車道、東西には磐越自動車道が走っています。高速自動車国道ベースでみると総延長が約413km(2026年3月時点)であり、これは都道府県別にみると北海道に次いで2位です。常磐道(広野IC~ならはIC、浪江IC~南相馬IC、相馬IC~新地IC)や磐越道(会津坂下IC~西会津IC、西会津IC~津川IC)の4車線化事業や、スマートIC事業(東北道大玉SIC(仮称)、常磐道小高SIC(仮称)、また休憩施設の新設事業として常磐道大熊PA(仮称)など、福島県内で多くの事業に取り組んでいるところです。
伊藤:
東日本大震災からの復興を支えるインフラ整備や、地域振興の取り組みについて教えてください。
外門氏:
東日本大震災では、当社管内の多くの路線で路面のクラックや段差、盛土崩落、伸縮装置の破損など多くの損傷が発生しました。震災直後は約2,300kmの通行止め、緊急点検や仮復旧を実施しましたが、翌日には緊急交通を確保し、13日後には原発事故の影響で復旧作業に入ることができなかった常磐道や損傷の激しかった三陸道、仙台東部道路の一部区間を除き、多くの区間で通行止めを解除しました。
当社としても、東日本大震災からの復興を支えるインフラ整備に継続的に取り組んできましたが、その象徴の一つが、被災地と首都圏を結ぶ重要路線である常磐自動車道です。震災により一時は不通区間が生じた常磐道は、復旧工事を経て全線開通を果たし、現在では地域の復興と発展を支える基幹インフラとして、その役割を担っています。

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- 東日本高速道路 外門氏

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- 開通式(常磐自動車道 常磐富岡IC~浪江IC)
全線開通から10周年という節目を迎え、物流の円滑化や人の往来の促進などを通じて、被災地の産業振興や日常生活の再建に大きく貢献しています。さらに、復興の進展と将来の交通需要を見据え、常磐自動車道の4車線化事業を進めています。福島県内の常磐道では、これまで暫定2車線であった浪江IC~南相馬IC間などで拡幅工事を実施し、交通容量と安全性の向上を図っています。例えば2025年度には、全長104mの請戸川橋架設工事が完了し、4車線化に向けた重要な構造物が完成しました。整備が完了すれば輸送力が飛躍的に向上し、緊急時の支援物資輸送や地域産業の物流強化に大きく寄与することが期待されます。
また、地域により近い高速道路利用を実現する取り組みとして、南相馬鹿島スマートICの活用や小高スマートICの整備も進められています。これらのスマートICは、南相馬市様をはじめとする関係機関と連携しながら整備を進めてきた施設であり、地域の意見や将来のまちづくり構想を踏まえた計画とすることで、高速道路と地域をより身近につなぐ役割を果たしています。スマートICの整備により、工業団地や生活拠点、沿岸部へのアクセス性が向上し、企業活動や観光、通勤・通学など日常生活の利便性向上に寄与しています。また、平時だけでなく、災害時には自治体の防災計画と連動した迅速な避難や支援物資輸送の拠点として機能するなど、地域防災力の強化にもつながっています。今後も、地方自治体と連携しながら、地域のニーズに即した高速道路の利活用を進め、復興の先にある持続的な地域づくりを支えていきます。
さらに、将来の災害への備えとして、地震による橋りょう・高架部の倒壊や橋げたのズレ、路面の段差発生を防止するため、橋脚の補強や落橋防止装置の設置を進めています。特に、大規模地震の発生確率が一定以上の地域については、「高速道路の耐震補強実施計画」に基づき対策を加速しています。大規模地震時における落橋や倒壊を防ぐ対策は概ね完了しており、さらに緊急輸送道路としての機能を早期に確保するため、引き続き耐震補強工事を推進しています。
伊藤:
他にも、東日本高速道路様は様々な環境保全や社会貢献をされています。SDGsの取り組みについてお聞かせください。
外門氏:
2025年に道路法が改正され、国の「道路脱炭素化基本方針」に基づき、道路管理者が脱炭素化の推進計画を策定する枠組みが導入されましたが、当社グループではこれに先駆けて「カーボンニュートラル推進戦略」を公表しています。
当社グループの事業活動による排出(Scope1、2)については、2050年度のCO2実質排出量ゼロの達成を目標に、中間的目標として2030年度においてCO2排出量を2013年度比で50%以上削減することを目指しています。また、間接的な排出(Scope3)については、高速道路を走行する自動車や高速道路の建設・管理のために調達する工事などによるCO2排出量削減が対象となりますが、こちらについては、高速道路のネットワーク整備等を含め政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの実現と2030年度における目標の達成を目指し、CO2排出量削減に寄与する施策を推進していきます。

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- (出所)『NEXCO東日本レポート2025』
具体的な取り組みとして、Scope1,2においてはトンネル照明やSA・PA等に使用する照明のLED化や、太陽光発電等を利用した再生可能エネルギーの取り組みを進め、施設の省エネ・CO2排出量削減に努めています。また、高速道路のり面の緑化や盛土への植樹等を通じ、CO2の吸収・固定を図るとともに生態系の保全や景観向上にも配慮しています。
Scope3においては高速道路ネットワーク、4車線化やスマートICの整備による交通の円滑化及び付加車線等の整備による渋滞発生の緩和により、高速道路を走行する自動車からのCO2排出量の削減に取り組むとともに、カーボンニュートラルに寄与する新技術・新工法の開発や活用を推進し、工事等現場においてもCO2排出量削減対策の普及・促進などに取り組みます。

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- (出所)『NEXCO東日本レポート2025』
伊藤:
SDGsの取り組みを支える、ファイナンスについてお聞きしたいと思います。発行されているESG債についてお聞かせください。
外門氏:
インフラ整備とSDGsの両立を図る資金調達手段として、当社はESG債(ソーシャルボンド・サステナビリティボンド)の発行を行っています。2019年6月には高速道路会社としては初めてとなるソーシャル・ファイナンスに関する第三者評価を取得し、調達した資金を高速道路事業に充て、「地域活性化」、「災害対策」、「交通安全の推進」、「環境保全」などの社会的課題の解決に取り組んできました。また、2024年6月には「サステナビリティ・ファイナンス・フレームワーク」の第三者評価を取得しています。
大雨・大雪等の気象災害が激甚化してきている中で、現在暫定2車線となっている区間を4車線化することで、高速道路を全面的に通行止めとするリスクを軽減することができます。また、大雨によるのり面崩壊が発生した際には、4車線のうち2車線を対面通行として、残りの2車線を復旧作業ヤードや被災地救援物資や救急車両の通行帯とし、交通機能を維持することが可能となり、大雪・大雨等に伴い並行する一般道が通行止めになった際には代替路として機能することとなります。
これらの効果が見込まれる4車線化事業については、「気候変動適応」に資する事業である旨、第三者評価をいただいています。福島県内では、磐越道の会津坂下IC~西会津IC間、一部新潟県内も含まれますが西会津IC~津川IC間が対象区間となっています。2026年6月までに、ソーシャルボンドを75回、サステナビリティボンドを2回発行しており、投資家から500件を超える投資表明をいただいています。そのうち約170件程度が福島県様や南相馬市様を含む地方公共団体からとなっています。今後も継続的にサステナブル・ファイナンスを活用し、社会的・環境的課題の解決に努めていきます。

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- (出所)東日本高速道路 IR資料
伊藤:
南相馬市様もSDGsへ多くの貢献をされていますが、取り組みの一部をご紹介ください。
藤原氏:
南相馬市では、2022年4月4日に、2050年度までに二酸化炭素など温室効果ガスの実質排出ゼロを目指す「南相馬市ゼロカーボンシティ宣言」を表明し、ゼロカーボン社会の実現に向けて掲げた7つの基本方針に対して10個の重点施策を定めています。
具体的な取り組みの一つとして、ハイブリッド車に比べて温室効果ガス排出量が少ない電気自動車(EV)の普及促進を重点施策として位置付け、平日は市役所公用車としての利用、休日は地域住民や観光客等が利用可能とする、EVカーシェアリングサービス事業を実施しています。この他にも住宅向け蓄電池や、住宅向け太陽光発電を支援しています。
2024年には環境省の「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金(重点対策加速化事業)」に応募し、「脱炭素重点対策実施地域」に選ばれました。
伊藤:
南相馬市様が東日本高速道路様の社債への投資を行った経緯をお聞かせください。

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- (出所)南相馬市ホームページ
藤原氏:
社債購入については内部で検討を重ねていましたが、購入を躊躇する状況が続いていました。一方で、金利のある世界では、余剰資金をただ置いておくのではなく、責任をもって運用しなければならないという考えもありました。
社債購入の検討を継続していた時に、東日本高速道路様とのIR面談に参加する機会がありました。IR面談の中で、資金調達を行ってインフラを整備する仕組みをご説明いただいたことで、東日本高速道路社債へ投資を行う意義を実感しました。ソーシャルボンドの購入は、単に財務運用上の目的だけではなく、まちづくりの一環の中で、社会的な課題の解決に貢献する非常に魅力的な取り組みだと考えています。こうした点も踏まえ、官民が連携して復興に取り組む一つの形として、東日本高速道路社債への投資を決定しました。
常木副市長:
東日本高速道路様の社債に投資した理由は、大きく3点あります。1点目は、「資金の地産地消」という考え方です。地域の資金を、地域や社会の基盤づくりに生かしていくという点に意義を感じました。2点目は、東日本大震災からの復興に代表される、東日本高速道路様との関係性の強さです。震災後の復興において、広域交通インフラが果たしてきた役割は非常に大きく、南相馬市にとっても東日本高速道路様は重要なパートナーであると考えています。そして3点目は、私たち自身が震災後、「この地域の未来をどのように次の世代へつないでいくか」という観点で仕事をしてきたことです。その考え方と、東日本高速道路様が掲げるサステナブル・ファイナンスの考え方は非常に近いものがあると感じました。
伊藤:
「金融資本市場の力で、世界と共に挑戦し、豊かな社会を実現する」というパーパスを掲げている野村グループは、2025年12月に100周年を迎えました。 ESG債の市場規模が拡大する中で、発行体様と投資家様をつなぐ役割を今後も続け、SDGs達成に向けた取り組みの更なる拡大を目指していきたいと考えています。
外門氏:
今回が2度目の南相馬市訪問となりますが、改めて、歴史や文化、伝統、豊かな自然、そして都市機能が調和したまちだと感じました。当社が担う高速道路は、まちとまちをつなぐ役割を果たしています。定住政策への貢献はもちろんのこと、観光振興や関係人口の増加といった面でも、南相馬市様のお力になれればと考えています。当社としては、社債を通じてお預かりした資金をもとに、常磐自動車道の4車線化をはじめとする事業を着実に推進し、南相馬市、浜通り、さらには福島県全体の発展に貢献していきたいです。
常木副市長:
単に東日本高速道路社債を購入したというだけではなく、その資金の流れを通じて思いを共有し、未来に向けてさまざまな事業を共に進めていくきっかけをいただいたと感じています。
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エンゲージメント対談企画「東日本大震災からの復興の取り組み」
(2,250KB)







