キノコでSDGs:食品以外に広がる用途

健康志向の高まりやヴィーガン人口の増加を背景に、キノコ市場は拡大を続けています。2019年に335億5,300万米ドルだった市場規模は、2027年には533億4,200万米ドルに達すると予想されているのだとか。実はキノコは一部を除き人工栽培が難しい生物です。木や落ち葉を分解して生きている「木材腐朽菌」と、植物と共生して生きる「菌根菌」に分けられ、マツタケに代表される菌根菌の商業栽培にはまだ成功していません。私たちの食卓に並ぶシイタケ、マイタケ、エリンギなどほとんどが木材腐朽菌で、これも人工栽培が可能になったのは昭和に入ってからと歴史は意外と浅いのです。

そのキノコですが、ゲノム工学の発展とともに分類や特性が明らかになってきたことで、新しい活用法が世界中で急速に立ち上がっています。このような分野のスタートアップは、菌糸体を意味する「Mycelium」と技術を意味する「Technology」の造語で「マイコテック(Myco Tech)」とも呼ばれ、近年注目を集めています。

注目を集めるマイコテック

野村アグリプランニング&アドバイザリーでは「注目を集めるマイコテック -キノコ・菌類が作る新産業-」と題したレポートで、食品以外にも広がるキノコの用途について分析・解説しています。

(1)キノコを使った代替肉開発

キノコの用途として大きな注目を集めているのが代替肉。キノコは高タンパク、高食物繊維、低コレステロールといった健康面でのアピールポイントに加え、他の植物肉では難しい筋繊維の触感や見た目が再現できる点も特徴です。

(2)キノコから作られる皮革や繊維製品

今後予想される皮革製品の需要増加に対し畜産生産余地は少なく、石油由来の人工皮革は脱炭素の流れを受け削減対象となる可能性があります。現在の皮革生産のすべてが代替品に置換することは考えにくいものの、高級ブランドとコラボレーションするスタートアップ事例も出てきました。

(3)キノコ由来プラスチック代替品

生分解性プラスチックや微生物・植物由来樹脂など性能・価格面で上回る競合製品が多く出回るため、需要は限定的とみられるものの、すでに欧米の一部大手企業では導入されており、当面は高級品やSDGsに敏感な企業を中心に採用が進むと思われます。

(4)キノコの分解能力の廃棄物処理への活用

上記のような新しい技術に使われるキノコは腐朽菌という種類で、自然界ではさまざまなものを分解して栄養分にしています。そのため、栄養源として、食品残渣や農業残渣といったものを活用することが可能です。

こうした各分野において、耐久性、食味、またサプライチェーンへの参入など、まだまだ品質の向上やスケール化の課題はあるものの、さらに研究が進めば、マイコテックは持続可能な社会に寄与し新たな経済成長へとつながるものとなるでしょう。

野村アグリプランニング&アドバイザリーのレポート「注目を集めるマイコテック -キノコ・菌類が作る新産業-」はこちらからご覧いただけます。

SDGs17の目標

  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12 つくる責任つかう責任
  • 13 気候変動に具体的な対策を
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