成長戦略と企業統治:2年目の注目点
論文2014年夏号
野村證券エクイティ・リサーチ部 西山 賢吾
目次
- I.はじめに
- II.成長戦略と企業統治:1年目の進捗状況
- 社外取締役の活用(会社法改正、東証上場規程見直し)
- 日本版スチュワードシップ・コード
- JPX日経インデックス400
- III.「企業と投資家との望ましい関係構築」プロジェクト
- 経済産業省「企業報告ラボ」の特別プロジェクトとしてスタート
- 中間論点整理(伊藤レポート)の公表
- 議論と現状・エビデンス
- あるべき方向性とさらに検討すべき事項
- IV.自由民主党「日本再生ビジョン」
- コーポレートガバナンス・コードの制定を東証に要請
- 持ち合い解消促進も重要な施策
- JPX日経400採用企業への社外取締役、IFRS導入状況モニターも提言
- V.コーポレートガバナンス・コードとは
- VI.おわりに
要約と結論
- 2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略一JAPAN is BACK一」の中で示された成長戦略に組み込まれた、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化とそれに関連した各種施策である、社外取締役の機能活用、日本版スチュワードシップ・コード(機関投資家の行動規範)の制定、収益性や経営への評価の高い銘柄で構成される株価指数の作成などは、現時点でほぼ具体化している。成長戦略の中のコーポレートガバナンスの強化の「1年目」は順調に進捗したといえよう。
- 成長戦略の中のコーポレートガバナンス強化が2年目を迎える中で、注目される動きとして挙げられるのは、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家との望ましい関係構築」プロジェク卜である。同プロジェク卜は4月25日に中間論点整理(伊藤レポート)を公表したが、ここでは、企業と投資家が目的を持った対話を行う上での基盤となる、「持続的成長の定義」や「短期志向(ショートターミズム)」、「中長期的な対話に向けた開示」などの論点提示や現状分析、今後のあり方などを整理している。今後さらに議論を進め、最終報告書が出される方向である。
- 自由民主党日本経済再生本部が公表した「日本再生ビジョン」(14年5月23日公表)も注目される。ここではコーポレートガバナンス改革に関する提言が重要な位置を占めており、具体的には、取締役(会)の行動規範と位置付けられる「コーポレートガバナンス・コード」制定と、株式持ち合い解消の促進が提言されている。これらの提言内容は、政府が6月末にも発表予定の「日本再興戦略」の改定版において取り上げられ、成長戦略の中のコーポレートガバナンス強化2年目の施策の中心とされる可能性が高いと考えられる。