富永 健司

要約

  1. 欧州連合(EU)におけるサステナブルファイナンスの市場において、環境・社会・ガバナンス関連の用語(以下、ESG用語)を含むファンドの名称変更(ESG用語の変更・削除・追加)が進展している。モーニングスターの調査結果によれば、2024年に、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の8条及び9条に合致する開示を行うファンドの名称変更は約170件に達した。
  2. こうした動きには、EUの証券市場の監督を担う欧州証券市場監督機構(ESMA)が2024年5月に公表した、ESG及びサステナビリティに関連する用語を使用したファンドの名称に関するガイドライン(以下、ガイドライン)が大きく影響している。さらに、ESMAのガイドラインが参照するSFDRについては、改正に向けた動きが進んでいる。
  3. ESMAのガイドラインの適用により、ESG用語を使用する際の要件が示されたことで、これまでESGファンドの名称として広く用いられてきた「ESG」や「サステナブル」という用語の使用が減少する傾向が見られている。このようなファンドの名称変更と運用ポリシーの見直しに伴い、従来のESG・サステナブル投資の内容が変容していくことが予想される。また、ガイドラインは関連する指数にも影響を与えていることから、こうした動きがグローバルにどの程度波及していくのかも注目される。
  4. さらに、新たに定義される「トランジション」の用語に基づくトランジション投資がどの程度広まっていくのか、そして、社会・環境面のトランジションがどのように推進されていくのかについても目が離せない状況である。