西山 賢吾

要約

  1. 2024年6月、そして2025年3月に開催された株主総会における主要上程議案の割合や平均賛成率を2024年3月開催の株主総会と比較すると大きな変化は見られず、全体的に株主の議決権行使に対する考え方に大きな変化はなかったと推察される。取締役選任議案、特に経営トップの取締役選任議案においては不祥事に対し引き続き厳しい眼が注がれた。一方、株主提案ではファンドからのものに一定の賛成が見られたものの、平均賛成率の低下が見られた。
  2. 議決権行使助言会社の2025年以降の助言方針改定では、ISS、グラスルイスともに独立役員の在任期間に関する基準を導入するが、その適用範囲は限定的である。また、グラスルイスでは女性取締役の増員、政策保有株式における自己資本利益率(ROE)基準の厳格化、人工知能リスクに対する取締役の対応等に関する助言方針が導入される。
  3. 一方、国内機関投資家の議決権行使基準の改定では、ROE基準の引き上げ(5%から8%)、「株価純資産倍率(PBR)1倍割れ」の議決権行使基準への取り入れ、女性取締役の増員(1名以上から取締役会の員数の10%以上など)、法定・任意を問わない指名・報酬委員会の設置、社外取締役の増員(取締役員数の3分の1以上から過半)などが注目される。
  4. 企業と株主・投資家との間で「緊張感のある信頼関係」の構築が重要であることや、エンゲージメントの拡充は議決権行使の重要性を一段と高める事などについては、これまでも繰り返し指摘してきたが、機関投資家を中心に2025年以降も議決権行使基準の厳格化が想定される中、それらの重要性は今後さらに高まると考える。