五島 佐保子
- 金融資本市場において、企業の合併・買収(M&A)の際の、環境・社会・ガバナンス(ESG)を考慮したデュー・ディリジェンス(以下、ESGDD)へのニーズが高まりつつある。ESGDDは、端的には、気候変動や人権等のテーマに関して、対象会社への質問票等を通じて、ESGリスク及び機会を特定・評価し、特定したESG課題を解決するための戦略を策定・実行し、目標を達成することで企業価値の向上を目指すものである。
- 世界では、欧州連合(EU)による企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)のように環境や人権デュー・ディリジェンスを義務化する法規制が導入されているほか、日本でも政府により企業が環境及び人権に関するデュー・ディリジェンスへの取り組みを始める際に参照可能なガイドラインを公表している。さらに、環境省は2025年4月、環境デュー・ディリジェンスの実効性向上を目指した議論のまとめを公表した。
- ESGDDに対する企業の主体性や経営層のコミットメントを基盤として、ESG経営体制の構築、経営層によるESG戦略実施状況のモニタリング、及び役員・従業員報酬へのESG指標の反映等の施策を推進することで、一連の取り組みの実効性が高まると言える。金融資本市場においては、企業が取り組むESGDDの高度化を投資家が適切に評価することで、企業価値の向上を後押しする役割が期待される。