野村 亜紀子

要約

  1. 日本では長寿化により「高齢期」の年数が延伸している。一定の運用の継続も含めた、資産寿命延伸の重要性も認識され始めている。一方で、高齢者の金融詐欺被害も後を絶たない。高齢者の特性を踏まえた金融リテラシー向上の取り組みは、重要性を増している。
  2. 金融経済教育推進会議の「金融リテラシー・マップ」は、世代別に最低限身に付けるべき金融リテラシーを整理したものである。高齢者は一つのカテゴリーとして特定されており、一般社会人と異なる内容も盛り込まれている。
  3. 高齢者の金融リテラシーの現状を見ると、正誤問題の正答率は若年世代より高い傾向にある。これは日本だけでなく米国や経済協力開発機構(OECD)の調査でも同様である。一方、高齢化の進む日本では、より適した尺度の開発が必要という問題提起や、金融リテラシー・マップの高齢者に関する記述の拡充が必要という指摘もなされている。
  4. 高齢期の金融リテラシーをめぐる優先課題としては、まず、平均余命や長寿化に関する知識と、加齢に伴う心身機能低下の認識の向上が挙げられる。そして、機能低下に備えるための事前準備について、高齢者の方から次世代との対話を始めることである。高齢期には学校や職場といった標準的なプラットフォームが存在しないため、これらのメッセージ伝達については、発想を広げた官民連携の模索が重要となろう。