西山 賢吾

要約

  1. 野村資本市場研究所が調査した2024年度末時点での日本の親子上場企業数は、2023年度末から11社純減して179社となった 。親子上場企業数の2桁純減は5年連続である。ピークであった2006年度に比べ親子上場企業数は4割強まで減少し、1991年度、1992年度(ともに180社)の水準に並んだ。
  2. 親子上場企業数の増減を見ると、減少については完全子会社化による上場廃止と、親会社が他の企業やファンド等に売却する持分の低下がほぼ拮抗しており、その手法が多彩になってきていることが分かる。一方、増加ではTOB(公開買付)等による既上場企業の子会社化の事例が2023年度に比べ増加しており、企業グループベースでの事業再編、事業ポートフォリオの見直しが積極的に行われたことがうかがわれる。
  3. 日本の親子上場の特徴の一つとして、長期にわたる親子上場関係の継続が指摘される。実際に2024年度末の親子上場企業のうち、少なくとも40年以上その関係が継続している企業が10社以上存在する。また、全体の3分の1の企業では少なくとも20年関係が継続している。
  4. 親子上場を巡る議論に関し注目されるのは、その対象範囲が上場企業同士の親子関係から上場、非上場を問わない支配株主、親子関係までには至らない持分法適用にまで拡大してきた点である。東京証券取引所はグループ経営に関する開示対象を、親子関係だけではなく支配的な関係を有する企業にまで拡大する方向である。また、親子上場の解消手法が多様化する中で、少数株主保護やガバナンス体制の高度化も従来以上に重要になる。こうした議論の進展は日本企業が企業価値を高め、国際競争力を一段と強化していく上で非常に重要であるため、引き続き注目したい。