江夏 あかね
- 国際資本市場協会(ICMA)は2025年6月26日、「ネイチャーボンドに関する実務者ガイド」(以下、実務者ガイド)を公表した。同ガイドは、自然関連プロジェクトの資金調達に、資金使途を特定した(UoP)債券(グリーンボンド、サステナビリティボンド)と資金使途を特定しない債券(サステナビリティ・リンク・ボンド〔SLB〕)において活用することを想定している。
- 実務者ガイドは、資金使途が自然関連プロジェクトに限定される場合、発行体の裁量で「ネイチャーボンド」という呼称を付与することを認めている。加えて、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(GBF)の2030年に向けたグローバルターゲットや「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD)に基づく情報開示に向けた自社評価等も考慮する形で設計されており、産業界・金融資本市場にとっても比較的馴染みやすいといった観点で意義があると言える。
- 世界及び日本におけるグリーンファイナンスの資金使途をめぐっては、カーボンニュートラルに資するものが中心となる傾向が続いている。ネイチャーポジティブに関しては、アジア開発銀行(ADB)による「生物多様性・自然保護債」(バイオダイバーシティ・ネイチャー・ボンド)や東急不動産ホールディングスによる「広域渋谷圏生物多様性グリーンボンド」等の事例を除き、グリーンファイナンスの資金使途の一部として自然関連プロジェクトが含まれているケースがほとんどとみられる。
- 今後、実務者ガイドの活用も通じて、(1)ネイチャーポジティブに資するファイナンスがどの程度拡大するか、(2)「ネイチャーボンド」との呼称で発行される銘柄がどの程度出現するか、が注目される。