江夏 あかね

要約

  1. 「改正GX(グリーン・トランスフォーメーション)推進法」(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律)が2025年5月28日、成立した。本法律は、二酸化炭素(CO2)の排出量が一定規模以上の事業者に対して、2026年度から本格稼働予定の排出量取引制度(GX-ETS)への参加を義務付けること等が柱となっている。
  2. 改正GX推進法には、対象事業者の範囲、排出枠の無償割当、排出枠取引市場、価格安定措置、移行計画の策定に関する内容が盛り込まれたが、2025年度末までに策定が予定される経済産業大臣による実施指針にて詳細が明らかになる見込みである。金融資本市場において、実施指針に関して注目が集まる可能性がある点としては、(1)ベンチマーク対象業種及び削減水準、(2)上下限価格の範囲、(3)移行計画に含まれる内容、が挙げられる。
  3. 排出量取引制度が2050年カーボンニュートラル目標達成に向けて意義のある仕組みとなるための主な論点としては、(1)市場参加者、企業、国民に対する理解可能性の促進、(2)制度の信頼性確保、(3)2050年カーボンニュートラル目標との整合性の維持、が挙げられる。
  4. 理解可能性の促進の観点から、金融資本市場においても、また日本の社会全体においてもカーボンプライシングの考え方が正しく理解されていけば、投資家がカーボンプライシングも意識しながら脱炭素化社会に向けて最適な事業ポートフォリオの構築にコミットする企業を、投資先として選好する流れがより鮮明化する可能性がある。また、そのような動きが広まれば、資金の流れが脱炭素化を後押しすることも期待される。