富永 健司、大川 隼人
- 近年、国内社債市場においてブロックチェーン等の分散型台帳技術(DLT)を活用したデジタル社債の発行事例が徐々に積み上がっている。同社債は、企業が投資家との関係強化を図るためのエンゲージメント手段として注目されている。
- デジタル社債の発行にあたっては、投資家情報をタイムリーに把握・管理することができるという特徴を踏まえた検討が必要となる。特に重要と考えられるのが、発行目的の検討段階における、「自社のデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環として、デジタル社債を発行し、本業支援や持続可能な開発目標(SDGs)に関する取り組みを展開する」という、資金調達とDX戦略を統合する視点である。また、発行目的に加えて、(1)リターンの設計、(2)募集方式、(3)発行プラットフォーム、等の検討が必要となる。
- 具体的には、丸井グループはDX推進を経営戦略の中心に据えて、デジタル社債を通じて金融とマーケティングを融合させている。日立製作所は、従来のグリーンボンドにおける、発行体及び投資家の課題を、デジタル社債によって解決を図った。また、将来的には、ファン投資家層の拡大に向けたさらなる動きが出現する可能性もある。
- 今後、デジタル社債の普及に向けて、(1)デジタル社債に関する意義の明確化と社内横断的な連携推進、(2)発行体と投資家のエンゲージメント深化、(3)SDGsラベル付きデジタル社債の進化、が論点となることが見込まれる。