富永 健司

要約

  1. 昨今、金融市場でデジタル技術の活用が進む中、サードパーティに関連するリスク(TPR)管理への関心が高まっている。この背景には、金融サービスにおけるAI(人工知能)の活用拡大に伴うサードパーティへの依存度の増加がある。
  2. TPR管理を巡っては、1980~1990年代の情報技術(IT)の発展に伴うアウトソーシングの一般化を契機に注目され始め、近年ではオペレーショナル・レジリエンス強化の観点から、金融監督当局による国際的な議論が一層活発化している。
  3. こうした状況を踏まえて、日米欧ではTPR管理に関する制度対応が進展している。加えて、生成AIの導入によって、TPR管理に関する課題がより複雑かつ高度化する傾向にあり、欧州を中心に金融監督当局による重要なサードパーティに対する監督や対話の枠組みを構築する動きが進んでいる。他方、金融監督当局からは、デジタル技術の活用において、少数のサービスプロバイダーに市場シェアが集中する構造は、ビジネスにおける規模の経済性の観点から、一定程度避けがたい傾向であるとの見解も示されている。
  4. こうした状況下で、デジタル技術の恩恵を最大限に享受するためには、リスクが顕在化した際のシステム障害や業務中断といった影響を最小限に抑えるべく、リスクを適切に管理するための体制を整備・強化していくことが重要だと言える。今後、AIの活用が一層普及していくことが見込まれる中で、金融市場において、効率的かつ効果的なTPR管理がどのように進展していくのか注目される。