佐々木 遼太、橋口 達

要約

  1. 近年、日本の地域医療を取り巻く環境は厳しさを増している。診療報酬の引き上げ幅を上回る物価高や人件費の高騰、病床利用率の低下、新型コロナウイルス感染症関連の補助金の終了等を受け、医療法人の医業利益率と経常利益率は、共に低下傾向にある。
  2. 米国においても、医業経営の状況は芳しくない。そうした中、米国の病院グループは、医業外収益の獲得を目的として、資産運用に注力している。米国最大級の病院グループであるクリーブランド・クリニックは、最高投資責任者(CIO)の主導の下、強固な運用体制を築いており、伝統的資産のみならず、ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンド等のオルタナティブ資産にも積極的に投資している。
  3. ヴァンダービルト大学メディカルセンターは、OCIO(Outsourced Chief Investment Officer)を活用し、モルガン・スタンレーに全資産の運用を委託している。OCIOとは、OCIOプロバイダーと呼ばれる資産運用会社等がアセットオーナーから、運用の実行や資産運用会社のファンドの発掘等の運用関連業務を複数ないし全て請け負うサービスである。
  4. 現状、日本の医療法人では、資産運用が法規制により禁じられているわけではないが、厚生労働省の監督方針の存在もあり、米国のような資産運用が行われていない可能性がある。財務基盤を確保し、質の高い医療サービスの提供や地域医療の持続性を高めるために、医療法人の資産運用を後押しするような制度整備を検討してもよいのではないだろうか。