パッシブ運用のための日本株ベンチマーク
-Russell/Nomura Prime指数の可能性-
論文2010年夏号
野村證券エクイティ・クオンツ・リサーチ部 徳野 明洋
目次
- I.はじめに
- II.パッシブ運用のためのベンチマーク
- 指数の役割とその発展
- パッシブ運用に資する指数の要件
- III.指数デザインの視座
- カバレッジの完全性と投資可能性
- 指数の再構築と売買コスト
- リバランスの程度と回転率
- 投資家の支持と取引コスト
- 客観的なルールと機動的な裁量
- IV.指数のパフォーマンス検証
- パフォーマンス検証の重要性
- 日本株指数のパフォーマンス
- R/N PrimeとTOPIX/TOPIXI000のリターン格差の要因分解
- 各要因の検討
- V.おわりに
要約と結論
- パッシブ運用とは、市場の平均的なリターンを追求する手法であるが、現実には市場の代理変数としての特定の指数に追随する運用である。パッシブ運用のベンチマークたりえる指数の要件を整理し、日本株指数の分野でのその理想像を追究する。
- 指数には、(1)市場動向を把握する、(2)市場の代理変数となる、(3)パッシブ運用の対象ポートフォリオとなる、など複数の目的で利用される。指数の評価をするには「何のために指数を利用するのか」との視座が最も重要である。
- パッシブ運用のための指数の要件の聞にトレードオフの関係がある。すなわち、カバレッジの完全性と指数の投資可能性、指数の再構築と売買コスト、リバランスの程度と回転率、投資家の支持と取引コスト、客観的なルールと機動的な裁量である。これらを具体的に検証し、理想的なベンチマークを考察する。
- パッシブ運用では資産クラスを可能な限り代替する指数が求められるが、同時に、投資対象であるポートフォリオとして投資可能でなければならない。透明で客観的なルールに基づいて構築される指数に分があるが、多くの指数デザインは収斂し、差はなくなってきている。
- その意味で、市場型指数のパフォーマンスの優劣が指数選択に意味を持つ。R/N Prime指数はTOPIXやTOPIX1000をアウトパフォームしている。
- 投資家・運用者の声に真摯に耳を傾け、「運用し易い」指数を目指す必要がある。