日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(18~19年度)
-偏在した上方修正-

論文2018年9月3日

野村證券 市場戦略リサーチ部/エクイティ・リサーチ部 松浦 寿雄、藤 直也

目次

  1. I.概要と業績予想主要前提
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2018年度予想の概要
    2. 2019年度予想の概要
  4. IV.集計表

要約と結論

  1. 18年度Q1は、Russell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年同期比8.4%増収、同16.9%経常増益となった。17年度Q4の前年同期比5.6%増収、同0.2%経常増益から、いずれも伸び率が加速した。また、経常利益のQ1の18年度通期に対する進捗率は26.0%と過去平均よりも高い。ただこれらは、(1)会計基準の変更によって商社の売上高が膨らんだことと、(2)一部企業の事業売却や会計的な一時損益などによって経常利益の水準がぶれたことの影響が大きく、結果として実態とはやや乖離した印象を与えている。
  2. 四半期業績の実態は、17年度Q4の前年同期比6%強の増収、同17%弱の経常増益から、18年度Q1は同5%強の増収、同13%弱の経常増益になったと見ている。17年度後半の世界景気の同時加速一巡により増収率が鈍化、それを受けて経常増益率も低下したと整理できよう。ちなみにトップダウン予想ではQ2は前年同期比8%経常増益で、Q3まで増益率の低下が続くと見ている。ただ、決算発表前のトップダウン予想は「前年同期比6%増収、12%強の経常増益」であり、Q1については概ねインラインである。また、増収率と経常増益率のバランスは業績好調を印象付けた。
  3. 18年度はRussell/Nomura Large Cap(除く金融)で前年度比6.8%増収予想、同11.3%経常増益予想となった。増収率は3.8%ポイント、16兆885億円の上方修正となったが、そのうち7割強は(会計基準変更の影響を含む)商社によるものである。除く金融、商社では前年度比3.0%増収から同3.9%増収に上方修正されたが、これはマクロ環境に比べると従来の増収率の見方が過度に慎重であったことも影響していよう。
  4. Russell/Nomura Large Cap(除く金融)の18年度予想経常利益の上方修正額は1兆565億円、上方修正率は2.4%である。ドル円前提は1ドル110.5円(前回前提106.0円)とした。Q1が終わった段階としては上方修正幅が大きく、「2桁増益予想」にも意外感があるが、今回の上方修正は一部企業に偏っており、1,000億円超の上方修正となった僅か4社で上方修正金額をほとんど説明できる。他方、経常利益ベースのリビジョンインデックスは+1.7%にとどまる。前提を円安ドル高に修正したにもかかわらず、上方修正と下方修正がほぼ同数となったことは、アナリストの景況感の慎重さを象徴していよう。