日本企業ボトムアップ企業業績見通し集計(22~23年度)
-円安効果を除いた業績の基調は弱い-

論文2022年9月7日

野村證券 市場戦略リサーチ部 マクロ・ストラテジーグループ

目次

  1. I.要約/業績予想主要前提
    1. 2022年度予想の概要
    2. 2023年度予想の概要
  2. II.業種別・経常増減益寄与率
    1. 2022年度予想の概要
    2. 2023年度予想の概要
  3. III.経常利益予想修正(前回予想からの修正)
    1. 2022年度予想の概要
    2. 2023年度予想の概要
  4. IV.集計表

I. 要約/業績予想主要前提

    本レポートは、野村證券アナリストによる企業業績予想を集計し、その集計結果を分析したものである。

    【2022年度予想の概要】

  1. Russell/Nomura Large Capの22年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+13.3%/+11.2%/+9.6%/+7.6%である(売上高と営業利益については金融を除くベース、以下同じ)。投資事業利益などの影響が大きいソフトバンクグループ(9984)を除くベースでは、経常利益/税引利益の予想はそれぞれ+7.2%/+3.1%となる。今回のアナリスト予想が準拠する為替前提は22年度:1ドル129.93円であり、21年度比で17.59円円安ドル高である。野村アナリストが試算する為替感応度(1円/ドル変動に伴う利益への影響)を基に集計すると、ソフトバンクグループを除く22年度予想経常利益増益率を6.6%ポイント押し上げる計算である。この為替影響を差し引いた「実力ベース」の経常増益率は前年比+0.6%となる。
    22年度の予想経常利益総額は前回集計時点(6月1日時点)から1.4%下方修正と、前回集計に続き下方修正となったが、ソフトバンクグループを除いたベースでは0.2%の上方修正であった。ただし、ここでも、為替前提の変更が22年度予想経常利益を3.6%押し上げる要因となっている。為替影響を除いた実力ベースでは3.4%の下方修正だったと試算できる。
  2. 【2023年度予想の概要】

  3. Russell/Nomura Large Capの23年度企業業績予想(前年比ベース)は、売上高/営業利益/経常利益/税引利益がそれぞれ、+1.8%/+11.7%/+8.0%/+7.7%である。ソフトバンクグループを除くベースでは、経常利益/税引利益の予想はそれぞれ+6.6%/+6.2%となる。同ベースの23年度予想経常利益総額は、為替前提を1ドル120.00円から1ドル130.00円に修正し円安メリットを反映したにもかかわらず、前回集計比0.8%の下方修正となった。下方修正の理由を確認すると、消費者向けデジタル機器需要減速による半導体関連の見通し悪化(電機・精密セクター)や、金利上昇による米国住宅市場減速(化学セクター)などであった。22年度予想の修正内容と比較すると、景気悪化による需要減に言及した下方修正が多くなっている。
  4. 22年度の予想経常増益率は円安により押し上げられている面が大きく、また為替前提変更に伴う円安メリットの反映を除けば、22、23年度共に予想経常利益は下方修正されている。円安効果を除いた実力値に近い日本企業の業績見通しは厳しくなっていると判断している。